コロナ禍の夏休み、「面倒な行事を回避できた」と喜ぶ人たちも
窓の外に広がる青空を見て、「今年の“夏休み”はどこにも行けなかった」とつぶやく。以前は定期的に参加していた飲み会や、子どもの部活の試合も潰れた。昨年に引き続き、コロナ禍の夏休みがこれほどつまらないものかと痛感したというのは、筆者だけではないはずだ。
「毎年お盆は東北にある夫の実家に帰省してお墓参り。その後は、ご近所さんにお土産を持って挨拶回り、夜も親族宅をハシゴして、その翌日は本家に一族が集まって大宴会。女性は給仕に後片付けに忙殺される……なんて、今どき珍しいようなお盆を過ごしていました」
東京都内の団体職員・向田恵理さん(仮名・40代)の夫(50代)は東北の農村出身。盆だけでなく、正月や春休みなど、長期休暇のたびに親族関連の行事に呼び出されていた。その都度、夫が運転する自家用車に飛び乗り、子どもと3人で東北道をすっ飛ばすのだ。
夫は東京に一軒家を建てたものの、地元や実家に対する愛が深く、仕事で疲れた体にムチを打つようにハンドルを握っているものだから、向田さんも「NO」と言いづらい状況が長く続いてきたのだった。
ところが、コロナ禍以降はこれらの行事はほぼ中止に。親族の中には地元の名士もいるため、親族で集まっていることが人様に知れ渡るとまずい、ということだったらしいが、向田さんは、残念そうにする夫の横で、「密かにガッツポーズを作ってしまった」と笑う。
「お義母さんは孫だけでも寄越して、なんて言ってましたけど、デルタ株が流行り出して子どもだって危ないという話をすると、理解してくれました。
親族には私と同じように、イベントのたびに隣県から呼び出されるお嫁さんがいて、本当に良かったねってLINEしました(笑)。全くやらないのは寂しいかも知れませんけど、毎年は厳しいです」(向田さん)
都会に住んでいるとあまり気が付きにくいのだが、田舎に行けば、今でも「夏休みの同窓会」が当たり前に行われている。向田さんのように、お盆は「実家や本家に帰る」という意識が強く残っており、自然と旧友たちが地元に集まるという。
その一方で、“面倒なイベント”を回避できたということで、密かに喜んでいる人もいるらしい。
コロナ禍で実家の面倒な恒例行事をまぬがれた
夫の横で密かにガッツポーズ
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