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消えたオリンピック競技のその後。「綱引き」は本気で復活を目指していた

古代五輪の花形だった「綱引き」

綱引き

かつては五輪の花形種目だった綱引き。復活の日は来るのだろうか

 20世紀初頭は花形競技のひとつで、1920年を最後に100年以上にわたって五輪から消えた競技となっている「綱引き」。復活する予定はあるのか、日本綱引連盟の専務理事・競技本部長である中山二三男氏に話を聞いた。  まず、綱引きの魅力について教えてください? 「綱引きは『ヒーローのいらないスポーツ』です。1人が強くても勝てませんからね。みんながまとまらないと勝てないので『心を一つにする』という意味でも綱引きはいいですよ。    それから『勝敗がわかりやすい』ということですね。印がここまでいけばこっちが勝ちというのが一目でわかります」  五輪の綱引きにはどんな特徴がありますか? 「運動会などでは『30秒経過した時点で引いていたほうが勝ち』といった時間制限がありますよね。五輪ではそれがなく、4m引き切った方が勝ちというルールでした。また、クラス全員が出場して人数も多い運動会に対して、五輪では1チームの人数も8人制でした」  どの国が強かったんでしょうか。 「イングランドやスペインが強かったです。競技としての綱引きの発祥は中世ヨーロッパなんですよ。貴族たちが自分の使用人や兵隊に縄を引かせ合ったのがはじまりと言われています」

五輪から綱引きが消えた理由

 五輪から外れてしまった理由はなんだったんでしょうか? 「ひとつは競技人口の少なさですね。日本でも小学校の運動会止まりといった場合が多くて選手として登録しているのは3500人程度です。東京五輪は『100年ぶりの復活』に向けて頑張ったんですが、やはり競技人口の少なさがネックになりました。    もうひとつは、1チームあたりの人数の多さですね。綱を引くのは8人ですが、監督やコーチ、リザーブメンバーなども含めると1チーム20人くらいになってしまいます。今は、この大所帯があまり好まれないんですよ。野球がパリ五輪から外れるのにも似たような背景があるみたいですね」  もし五輪競技として復活したら、日本はメダルを狙えますか? 「日本はこれまで、国際大会での最高は男子で4位でした。女子では、20年くらい前に国際大会で3連覇していたチームもありました。ですが、今でもヨーロッパが強いのと、他には台湾ですね。台湾では、綱引きが大学まで学習カリキュラムに入っていますからね」  復活に向けて、どんな対策を練っているのでしょうか。 「台湾のように、中学校以上でも学習のカリキュラムに綱引きを入れてもらうように働きかけています。また、3人制バスケットボールや7人制ラグビーが出てきたように、綱引きも人数を減らす提案も検討したり、多様性が求められている現代に合わせ、男女混合をJOCに提案して復活できるように頑張っています」  五輪競技だけがスポーツではない。むしろ五輪は、様々な軋轢の中にあるため、今回ご紹介した五輪から「消えた競技」の方が、純然たるスポーツの楽しみを味わえるのかもしれない。 取材・文/Mr.tsubaking
Boogie the マッハモータースのドラマーとして、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌を担当し、サエキけんぞうや野宮真貴らのバックバンドも務める。またBS朝日「世界の名画」をはじめ、放送作家としても活動し、Webサイト「世界の美術館」での美術コラムやニュースサイト「TABLO」での珍スポット連載を執筆。そのほか、旅行会社などで仏像解説も。
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