「叔父はずっと営業畑で、そのときは部長職に就いていました。営業マンであれば身だしなみは重要ですし、私のようなロン毛は論外なのはこちらも理解できます。 　ただ、こっちだって会社の規則を破っているわけじゃないですし、そもそも企業によって違うと思うんですよ。それでも相手は叔父ですし、両親もいたので相槌（あいづち）を打って受け流そうとしたんです」 　ところが、お酒も入っていたこともあり、叔父は徐々にヒートアップ。説教は一向に終わらず、それどころか「そんな格好で働ける職場なんてロクでもないところだろう」と会社に対しても文句を言い出す始末。これにはさすがの高屋さんもカチンと来てしまいます。 「今になってみれば、これで腹を立てるなんて大人げなかったと反省しています。けど、自分だけならともかく、会社までバカにされて黙っていられなくなっちゃって。『ウチの会社がロクでもないって発言を訂正してくだい』って言ってしまったんです」 　これに叔父もさらにヒートアップ。「目上の人間に対し、なんだその態度は！」と声を荒げ、続けて父親にも「お前は息子にどういう教育をしているんだ！」と文句を言ってきたそうです。 「父さんは何度もなだめようとしてくれたけど、収まる気配は一向になかったですね。叔母さんと母さんはオロオロしているし、ちょっと前までの楽しい食事会は完全に台無しです。それで叔父にますますムカッ腹が立って、『こっちは叔父さんの会社と違って大手ですし、一応、役職にも就いてます。何も知らないクセに勘弁してくださいよ』って言ってやったんです。 　プライドの高い人だったから“大手”ってパワーワードが堪（こた）えたのでしょうね。そのまま何も言葉を発せず、急に立ち上がったと思ったら、そのまま帰っちゃったんです」