更新日:2024年02月01日 15:37
エンタメ

【DCドラマ ピースメイカー】よしひろまさみち×SYO「イカつい男たちのナイーブな面を観るとグッときます」

ジェームズ・ガン監督が手がけた映画『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』に登場するピースメイカーは、平和のためなら殺人だっていとわない過激で矛盾したヒーローだ。 どのキャラもクセが強い「スーサイド・スクワッド」のメンバーのなかでも、ぶっ飛んだピースメイカーを主人公にしたDCEU(DCエクステンデッド・ユニバース)初のTVシリーズ『ピースメイカー<シーズン1>』のデジタル配信、DVDレンタル、そしてブルーレイ コンプリート・ボックスの発売が10月7日に始まる。 そこで映画ライターのよしひろまさみち、SYOの対談を実施。プロレス団体WWEのスーパースターであるジョン・シナの躍動する肉体と繊細な演技、DCコミックスのDCEUが原作だからこそ描けた時代にマッチしたダークヒーロー、日本のマンガとの意外な共通点など、本作の魅力を縦横無尽に語ってもらった。

監督・脚本はジェームズ・ガン、ピースメイカー役はジョン・シナと映画『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』のスタッフ&キャストが再集結。吹き替え版も大塚明夫、水樹奈々、遠藤純一と豪華声優陣が続投する

映画『ザ・スーサイド・スクワッド』のノリはそのまま

――DCEU初のTVシリーズの主人公がピースメイカーとなりました。映画『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』ファンであるお二人は、知ったときはどう思いましたか? よしひろ 映画公開当時、なぜピースメイカーにもっとフォーカスしてないんだろう?と少し疑問に思っていました。今回のドラマシリーズを知ったときは、なるほどこのドラマのためだったのねと妙に納得しました(笑)。 SYO  最初は意外だなと思いました。でも、映画ではいい人っぽさが垣間見えるシーンもあったし、“平和”に取り憑かれて自己犠牲が過ぎてしまう繊細な一面を持っているキャラクターだから、気になってはいたんです。それにピースメイカーはアメリカ白人の業みたいなものを背負ったキャラクターだから、掘り下げ甲斐があるなと思いました。

映画ライター・よしひろまさみち

よしひろ これまで正義のヒーローになりたいと願いながら、闇落ちするヒーローを散々見てきましたが、ピースメイカーは初めから闇落ちしている(笑)。仲間とミッションを進めていくなかで、次第に前向きになっていくのは今の時代に合ってるんじゃないかな。 SYO 新しいですよね。あとは誰でもヒーローになれることを教えてくれるのもいい! ヒーローとその他のサポートメンバーというくくりを取り外し、普通ならただボタンを押すだけのようなキャラが最前線で活躍するのは痛快でした。それでいて活躍してもコンプレックスは抱えたままだからウソっぽくない。 よしひろ さすがジェームズ・ガン監督! 全8話の脚本も監督自身が書いているので、ノリは一緒だから絶対についてこられるはず。しかも第1話の冒頭で映画『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』がどんな物語だったのかをザックリと紹介してくれていたから親切!と思った(笑)。 SYO 本作ではピースメイカーの過去に起きた出来事も描かれるので、こっちを先に観てから『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』を鑑賞しても十分楽しめますよね。

現役のプロレス団体WWEのスーパースター・ジョン・シナ

――ピースメイカーを演じたジョン・シナは現役のプロレス団体WWEのスーパースター。昨年は『ワイルド・スピード ジェットブレイク』に出演し、俳優としての活躍にも注目が集まっています。 よしひろ WWEのプロレスラーはいつでもハリウッドのアクションに対応できるからだが出来上がっているんですよね。ジョン・シナだけでなく、ドウェイン・ジョンソンやデイヴ・バウティスタも、みんな芝居も上手いんだから言うことなし!

映画ライター・SYO

SYO 僕が最初にWWE出身の俳優を意識した作品は中学生の頃に観た『スコーピオン・キング』です。ドウェイン・ジョンソン主演なのですが、ドウェインが“ロック様”と呼ばれているのを不思議に感じていました。なぜ名前が二つもあるのだろうかと(笑)。 よしひろ まだその頃は、SYOさんはドウェインのリングネームを知らなかったわけですね。 SYO あとからWWEに所属していたことを知りました。ちなみにWWE出身の俳優がこんなに活躍するきっかけとなったのは、やはりロック様だったのですか? よしひろ そう、ロック様から。以前からアクション俳優として、アーノルド・シュワルツェネッガーやシルヴェスター・スタローンは活躍していたけど、プロレスラー出身ではそんなにはいなかったですね。 SYO シュワちゃんは元ボディビルダーでしたね。 よしひろ プロレスラーは全身に美しい筋肉がついているから、まさに漫画みたいなルックスでしょう。だから、アメコミを実写化しようとすると真っ先に白羽の矢が立つ。DCUとマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)両方からオファーが殺到しているのも頷ける。音楽業界でマドンナが耕した畑にレディー・ガガが苗を植えたように、ロック様が耕した畑に、今ズカズカとデカい男たちが乗り込んできているところではないでしょうか(笑)。 SYO  確かに(笑)。WWE出身の俳優だと、デイヴ・バウティスタのキャリアがすごく興味深くて、それこそジェームズ・ガンが監督を務めたマーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『ブレードランナー 2049』や『DUNE/デューン 砂の惑星』など役の振り幅が広いんですよね。 よしひろ わたし『DUNE/デューン 砂の惑星』で彼が演じた役、すごくユニークで好き。 SYO WWE出身の俳優はアクションがしっかりできるだけじゃなくて、繊細な芝居ができるのが魅力なのかなと思います。DCコミックスの実写化はバットマンやスーパーマンを始め、ダークな作品が多いから演じるのが難しそう。それなのにジョン・シナは見事にピースメイカーの葛藤を演じ切りましたね。 よしひろ 彼らってガタイはいいけど性格はナイーブじゃない? 肉体が強固だったら、メンタルも強固というのは幻想ですよ。コンプレックスがあったり、虐げられた経験があるからこそ、からだを鍛えてまずは外見から変えようという人も多いはず。 SYO イカつい男たちのナイーブな感情表現を映画やドラマで観るとグッときますよね。 よしひろ そう、そこがセクシーでいいの!

ピースメイカー<シーズン1>の
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日本の少年マンガとのシンクロ

――実際のアクションシーンにはどんな印象を抱いていますか? SYO バットマンなどの武骨で地に足の着いた格闘スタイルに、スーパーマン的な飛び道具っぽいエッセンスが入るという、DCらしさを感じられる構成でした。あとはジェームズ・ガンらしいというか、容赦なく人を殺すシーンの見せ方がうまい(笑)。ほかにピースメイカーがマンションから飛び降りるシーンは、クールに飛び降りるのではなく、普通にジャンプして落ちていたので、本当に痛そうでした……(苦笑)。メンタル的にも、ちょっと幸せな気持ちに浸った瞬間に過去の暗い記憶をフラッシュバックさせる手法もうまいなと。 よしひろ みんなジョン・シナが痛がっているところが見たいのよ(笑)。あんな大きなからだなのに、吹っ飛ばされるシーンが満載! 個人的にすごくいいなと思ったのは、傷がバンバンついていって消えないところ。無傷のヒーローって、共感できないじゃない? SYO おっしゃる通りです。僕の大好きな漫画で『僕のヒーローアカデミア』という作品があるんですけど、作者のこだわりで主人公の傷が増え続けるんです。そういうのって大事ですよね。 よしひろ うん、すごくリアリティがあっていいと思う。 SYO それで思ったのが、日本のマンガとのシンクロです。日本の漫画って映画やドラマと比べて表現の規制がそこまで厳しくないじゃないですか。最近は少年ジャンプで連載している作品も過激描写を取り入れつつ、土臭くない現代っぽいグロさがあるし、正義と悪の単純な二元論ではない。「ピースメイカー」に通じるところが多いと思います。「チェンソーマン」や「呪術廻戦」が好きな人や若い世代にも刺さるはず。 よしひろ 過激描写でいうと、このドラマはアメリカの有料ケーブルテレビ局HBOが主体となったHBO Max(動画配信プラットフォーム)だから配信できたようなところあるよね。 SYO HBOといえば海外ドラマの『ゲーム・オブ・スローンズ』あたりから映画レベルのクオリティで作られていて、残酷描写も容赦ない印象があります。これをテレビで放送していいの?って驚きました。 よしひろ アメリカの3大ネットワークでは絶対に放送不可能な過激さよね。HBOは昔からテレビでは難しいといわれた過激な描写にチャレンジしてるんです。『セックス・アンド・ザ・シティ』なんてタイトルに“セックス”をつけちゃったりして当時にしては攻めてたと思う。だからHBO Maxは他のケーブルテレビ系の配信サービスとは一線を画し、古くからのHBOユーザーの好みを大事に作っているのが伝わってくるよね。 SYO ピースメイカーも過激なのに共感してしまう。まったく境遇の異なる人たちが出会い、同じ目的に向かって力を合わせているうちに仲間や友達になっていく姿にグッときました。社会に属さなくても小さなファミリーみたいなものがあればそれでいいっていうのがいいですよね。 よしひろ ポリコレを風刺するような痛烈なセリフが満載なのに、誰も置き去りしない。 SYO 僕は『ピースメイカー』は、はみ出し者たちが自分の居場所を見つける物語だと思っています。今はマジョリティとマイノリティを行き来していい時代だって教えてくれる。マジョリティに属している人にもマイノリティの側面があって、それを隠さなくていいんだよって。

すでにシーズン2制作決定!

――すでにシーズン2の製作が決定しています。お二人がシーズン2に期待することを教えていただけませんか。 よしひろ 『ジャスティス・リーグ』とどう絡んでいくかというのは期待しちゃうよね。 SYO 「スーサイド・スクワッド」の他のメンバーも絡んでくるのかどうか気になります。バットマンやジョーカー、ハーレイ・クインも出てくるのかなと想像するだけでワクワクしますね。 よしひろ 声優もそのままで続投してほしい。ピースメイカー役に大塚明夫さん、エミリア役に水樹奈々さん、ビジランテ役に前野智昭さんなど吹き替えの声優陣がすごく豪華じゃないですか。 SYO 普段は吹き替えではあまり観ないのですが、豪華さにつられて吹き替えで観てみるとはまりましたね。大塚さんのピースメイカーは可愛らしさが増し、めちゃくちゃはっちゃけていました。 よしひろ 大塚さんはカッコイイ役が多いですけど、本当はこういう役のほうが好きなんだと思う(笑)。 SYO  シーズン1はヒーローたちが人知れず世界を救う感じがすごく良かった。スケール感やユーモアのセンスそのままにシーズン2を作ってほしい。そういえばシーズン2の前にDCのアンチヒーローが主人公の映画『ブラックアダム』が12月2日に公開されますね。 よしひろ そうよ! 主演はロック様ことドウェイン・ジョンソン! 予告編でブラックアダムは「平和なんか知るか」って言ってるんだけど、どんなヒーローなのよ(笑)。 SYO 『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』『ピースメイカー』でヴィオラ・デイヴィス演じる政府高官のウォラーも登場するらしいので、まずは『ピースメイカー』を鑑賞して、12月に備えてほしいですね! (取材・文/奥村百恵) よしひろまさみち 「sweet」「otona MUSE」で編集・執筆を担当。日本テレビ系『スッキリ!!』で月1回レギュラーでオススメ映画紹介をはじめ、ラジオや雑誌でも幅広く映画を紹介している。ツイッター@hannysroom SYO 物書き。’87年福井県生まれ。映画を中心に、アニメやドラマ、本、音楽などの取材やコラム執筆、イベントMC等を手がける。「装苑」「CREA」「CINEMORE」「シネマカフェ」「FRIDAYデジタル」「映画.com」などの雑誌、Web媒体に寄稿。ツイッター@SyoCinema
「ピースメイカー<シーズン1>」 ブルーレイ コンプリート・ボックス 発売中/DVDレンタル中/デジタル配信中 ■ピースメイカー<シーズン1>ブルーレイ コンプリート・ボックス(2枚組)価格:¥13,000 (税込) <映像特典(ブルーレイ)>(約55分)予定 ※一部変更になる可能性がございます。 メイキング/ピースメイカーが抱える父との関係/特殊効果の世界/メンバー紹介:ピースメイカー/メンバー紹介:アデバヨ/メンバー紹介:ハーコート/メンバー紹介:エコノモス/メンバー紹介:ビジランテ/メンバー紹介:マーン/メンバー紹介:ワッシー/エコノモスのスタジオツアー/チュクーディ・イウジのコミック朗読会/NG集/ピースメイカーのヘルメット/ピースメイカーとビジランテの関係/ピースメイカーのパーソナリティとは?/アデバヨが解釈するDCの世界/ツイート大好きピースメイカー/オープニングの舞台裏/正しい悪態のつき方 発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント 販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント Peacemaker and all related characters and elements © & ™ DC and Warner Bros. Entertainment Inc. ※レーティング:R-15

ピースメイカー<シーズン1>の
詳細は公式サイトで

<提供/ワーナー ブラザース ジャパン>
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