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猪木さんのメッセージ「レスラーが客に媚びる試合をしたらプロレスは終わり」

ライバル団体・全日本プロレスとの確執、大量離脱への思い

『俺のプロレスvol.4』より

――旗揚げからしばらくは困難も絶えなかったと思いますが、常に成功を信じ続けることはできましたか? できたとしたら、その理由は何だったでしょう? 猪木 一生懸命練習し、いい試合をしているという意識が、いつか多くの人を振り向かせられると思っていました。また、タイガー・ジェット・シンという好敵手が誕生したのも大きかったですね。 ――当時、全日本プロレスのことはどのように思っていたのでしょうか? 猪木 あまり意識することはありませんでしたが、タイガー・ジェット・シン選手やスタン・ハンセン選手など、新日本で育っていった選手が全日本に引き抜かれましたが、後年会うと、「猪木との試合が俺にとって一番のいい試合だった」と言ってくれる。社交辞令かもしれませんが、嬉しいものです。 ――長い歴史の中では、選手や関係者の離脱もありました。そうした事件が起きた際には、どのように考えていたのでしょう? 猪木 長州をはじめ、多くの選手が離脱したとき、苦し紛れに「大掃除ができた」と言ったんです。しかし、それを知人に諫められた。自分でもよくなかったと思います。そこから一層、過去を振り返って悔やんでいる暇があれば、前へ踏み出そうと考えるようになりました。

実現できなかったアミン大統領との一戦

――新日本プロレスでご自身が戦った試合の中で、今、あえて一つだけ挙げるとしたらどの試合が思い浮かびますか? 猪木 マサ斉藤選手との巌流島決戦。あの頃、新日本の内部では長州・藤波世代にメインを譲れという動きがありました。そこで私は、そうはいくかい、と巌流島決戦を打ち上げ、それにマサ斉藤選手が呼応してくれた。実際にテレビで放送されると長州vs藤波の試合よりも私と斉藤選手の巌流島決戦のほうが視聴率が高かった。斉藤選手も巌流島を生涯の誇りと言ってくれ、棺の中に私と戦っている写真を入れたそうです。 ――やろうと思っていて実現に至らなかったことはありますか? 猪木 アミン大統領との一戦ですね。レフェリーをモハメド・アリがやるということで話が進んでいましたが、内戦勃発により中止になりました。 ――今もたくさんのファンがプロレスを楽しんでいます。ファンの方々にメッセージをいただけますか? 猪木 時代時代でプロレスの形も変わるだろうし、現役でない私が試合自体についてとやかく言うのはやめにします。しかし、レスラーが客に媚びる試合をしたら私はそこでプロレスは終わりだと思っています。客に媚びるのではなく試合内容で、力ずくで観客を振り向かせるような試合を今のレスラーにはしてほしいですね。ファンの皆様にはそうした媚びるレスラーを淘汰するような厳しい目をリングに向けてもらえたらと思います。  現在の新日本プロレスにおいて“猪木イズム”といった言葉は似つかわしくないかもしれない。が、スタイルは違えど、リング上で戦う選手たちの汗と誇りに古いも新しいもない。観客の度肝を抜くファイトを見せ続けて欲しいーー誰よりもマット界の未来を案じ続け、行動してきた猪木さんのご冥福を改めてお祈りする。合掌。 <取材・文/俺のプロレス編集部>
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俺のプロレスvol.4

プロレス50年の総決算!あの時、何が起こっていたのか?

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