更新日:2024年02月05日 11:48
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すべてが島耕作の真逆?最先端の働き漫画『株式会社マジルミエ』の魅力

肩書ではなくチーム名

島耕作シリーズ最大の特徴は、島耕作が出世するとともに、作品タイトルが課長、部長、取締役と、役職の肩書でアップデートされることです。これは、会社内での出世と肩書こそがサラリーマンのアイデンティティだったことを端的に象徴しています。 一方で、マジルミエは作品タイトルが会社名そのものです。この作品は、マジルミエという零細ベンチャーの成長を描く、チームの物語なのです。会社メンバーのアイデンティティは職階ではなく職務にあり、更に新しい社員も少しずつ加わり、互いが信頼し補完し合って理想の会社=チームを大きくする過程こそが、物語の縦軸です。肩書よりもチーミングが働く動機付けになるという、これも令和ならではの働くスタイルでしょう。

社内政治ではなく社会課題

島耕作の会社員人生の大半は、出世のための社内政治が中心に据えられていました。平凡に生きたいと考えていた島耕作は、仕事で成果を出しつつ、社内外で恋愛を楽しみながら、派閥争いを巧みに乗り切り、要領よく出世します。会社や日本をどうしたいか、自分は何のために働くのか、そうした視座が一般論レベルで薄いまま、いつのまにか社長にまで上り詰めました。 しかしマジルミエの重本社長はそうではありません。過去に不幸な災害を防げなかった後悔から、「すべての魔法少女に光を灯す世界を作る」というパーパス(存在意義)を掲げ、それに共鳴した社員たちとともに、怪異という社会課題の解決のために働くのです。広域魔法では怪異だけでなく町まで破壊してしまう為、マジルミエでは小規模な個別対応魔法のカスタム生成で、町にも魔法少女にも負荷をかけない怪異駆除を目指します。 企業に社会的な存在意義が求められる今、社会課題と向き合うマジルミエは、きわめて現代的な会社なのです。 『株式会社マジルミエ』は、こうした令和ならではの労働観の中で、主人公と会社の成長を縦軸として展開します。さらに横軸として、ベンチャーと大企業の対立と共鳴、ライバル社の魔法少女との交流、さらには魔力規制緩和を巡る利権争いまで、さまざまな要素が加わり、しり上がりに盛り上がっています。通常のサラリーマン漫画にはない魔法アクションも魅力です。 10月にはアニメ化も決定しているので、まさにいま読んでおくべき令和のサラリーマン漫画といえるでしょう。 <取材・文/真実一郎>
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