コンビニで長く働いてきた筆者。辞めていた時期もあるが、現在はライター業の傍ら、知り合いの店長に「人手不足」を理由に頼まれ、空いた時間だけ手伝う生活をしている。 　筆者はベテランなので、客の失礼な態度や言葉遣いなどにいちいち腹を立てないし、どうにか処理できる。今回は、そんな筆者がいま思い出しても気分が悪くなるほどのエピソードを書いていきたい。最初に断っておくと、客のほとんどが常識的で良い人なのだが、ごく稀に信じられないことをやる“最悪の客”が訪れる。 　 　 　夕方、店のバックヤードにいると電話がかかってきた。出ると女性の声で、スタッフに対する苦情のようだ。 「お宅の店で深夜に働いている外国人、昨夜行ったら寝ていたのよ。しっかり仕事をするように教育してください」 　こんな変な苦情は初めてだ。筆者が働く店舗には外国人のスタッフはいない。どこに電話しているのか……。 「別の店舗ですよ。ここには外国人はいませんよ」 　そう言うと、相手は詫びることなく電話を切った。筆者も夜勤で働くことがある。もちろん本来、勤務時間中に居眠りしていいわけではないが、深夜だけに睡魔は仕方ないものがある。もしもスタッフが寝ていても、起こしてあげればいいだけだ。 　それをわざわざ、しかも他の店舗と間違えて苦情を入れるとは。その店に直接出向いて店長に苦情をいれるのならまだわかるのだが……。 　 　 　先日、筆者がいないときにこんなことがあった。早朝、店ではスタッフAくんが一人で働いていた。そこに作業服を着た、いかにもガラの悪い男が入ってきたという。 　その男はおにぎりを手に取るとポケットに入れた。Aくんは警戒した。これからどうするべきか、対処方法を考えていた。すると男は出口に向かった。店を出るかと思いきや、いきなり電子タバコを吸い始めた。信じられない行動だ。 　そして吸いながら再び商品の置き場所に戻り、おにぎりをまたポケットに入れる。そのまま出て行こうとしたとき、Aくんはキレた。 「ポケットに入れた物を出せ！ あとタバコを消してくれ。非常識だろ！」 「なにも盗ってねえよ」 　往生際が悪い男だ。 「わかっているから。おにぎりを2個出せ！」 「だから取ってねえよ」 「これから警察呼ぶから待っていてくれ。あなたがおにぎりを返して、二度と店に来ないならば呼ばないよ」と伝える。 　Aくんは、この男が刃物でも出してくるのではないかとも思い、一刻も早く店から出て行って欲しかったようだ。男には「警察」の言葉がきいたのか、おにぎりをポケットから出して帰っていったという。 　すこし前、夜中にコンビニ店員が刺される事件があったので、もしも対応を間違えたら危なかったかもしれない。