更新日:2024年05月18日 09:33
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2年で有料会員2万人の「みんかぶマガジン」編集長が語る快進撃の秘訣「読者の人生に伴走するメディアであること」

総理大臣から西成の労働者までが肩を並べて登場するメディアになりたい

――みんかぶマガジンは金融に捉われず、芸能から夜の街の事情まで幅広いジャンルの記事を取り扱っていますね。記事のテイストとして、今後どこまで攻めていく予定でしょうか?  実は、そんなに攻めているつもりもないんです。あくまでも、読者は「この識者」の「こういう企画」だったらお金を払ってでも読みたいのではないかという仮説のもと動いているため、世間をビビらせてやろうというような攻撃的思考のもとやっているわけではありません。そういう意味では、誰でも取材対象者にはなります。大阪の西成や公園などで一生懸命生きている方と、いわば総理大臣のようなアッパー層を同列に扱うようなメディアになりたいです。

風俗嬢と政治学者が同じ特集(「モテの超心理学」)に並んだことも。多様性のあるコンテンツづくりを目指したいという

――鈴木さん自身が普段、編集長として行っている自己研鑽について教えてください。  ヤフーニュースのランキングやX(旧ツイッター)のトレンドなど、今の時流をリアルタイム教えてくれるものは、とにかく毎日数時間置きにチェックするようにしています。また注目されている本は読むようにしていますし、流行りの映画やドラマも見て音楽もききますし、街をあてどもなくフラフラ歩くようにもしています。ほとんど趣味ではありますが、そのインプットの繰り返しが、読者のみなさまから”奇抜”と呼ばれる企画の源泉かなぁとは思います。  前述のとおり、編集方針は特に設けていません。また編集会議も行っておりません。編集部員との日々の会話の中で、企画はバンバン決めていきます。現場から提案された段階では微妙でも、これまでに培った課金してもらうノウハウをもとに、どうやったら企画として成立するのかをその場で一緒に考えて方向性だけ決め、あとは現場に任せます。

読者がなぜ課金したのかというストーリーを想定する

――フットワークの軽さが、刺さるコンテンツを生み出している要因なのかもしれませんね。ところで、有料記事と無料記事のつくり方に違いはありますか?  有料記事の作り方は、オンラインの無料記事とも、新聞記事とも、雑誌記事とも違うと思っており、新たなフォーマットがあると考えています。新聞なら、最初に大切なことをもってくる逆三角形型、無料ウェブ記事ならページネーションで「次へ」をクリックさせ続けさせるために大切なことを最後にもってきます。  有料記事はペイウォールを意識して、前半と後半で記事のテンションを変える必要があります。そこらへんの考え方や、読者がどうやってその記事にたどり着き、なぜ課金することになるのかというストーリーを現場と共有した上ですすめています。 ――今後、課金制サブスクメディアはどうなっていくと思われますでしょうか? そのなかで、みんかぶはどんな立ち位置にいたいでしょうか。  紙のメディアが厳しい状況にあるのはいわずもがなですが、無料ウェブメディアも数年前の絶好調の時期からかなり陰りが見えています。無料メディアを支えてきたアドネットワークの広告単価は下落しており、かつての収益力はなくなっています。ネットワーク広告の単価については今後も下がりそうです。  そんな中でサブスクに切り替えるメディアは今後も増えるだろうと思っています。新規参入者が増えてくる中、われわれは読者との信頼関係を築けているメディアでありたいとは思います。 【鈴木聖也】 みんかぶ編集長。1988年前橋市生まれ、慶應義塾大学法学部卒。共同通信社記者、プレジデント社編集者・デスクなどを経て、2022年より現職。2019年雑誌ジャーナリズム大賞デジタル賞受賞。 <構成/アンヨナ>
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