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「早くウチの子供に使わせろ!」“大谷グローブ”を巡って教育現場が頭を悩ませるワケ

野球をしないコにキャッチボールは難しい

グローブ

写真はイメージ(以下同)

 使用方法を巡って紛糾したことには、さまざまな要因があると、この副校長は指摘する。 「まず、今のコは男子でもキャッチボールをしたことがないコのほうが多いんです。ですから、いきなりグローブをはめてキャッチボールはなかなか難しく、誰か先生が付いて見ていなくちゃいけない。それと場所ですね。都内の校庭はさほど広くはないので、休み時間や放課後に自由にキャッチボールをさせるのはやはり危険なんです」  この学校では最終的に体育の時間に、テニスボールを使って大谷グローブでキャッチボールをする時間を設け、全校生徒が一度は使えるようにしたという。 「PTAなどを通じていらなくなったグローブを寄付してもらい、何人か同時にキャッチボールができるようにもしました。今も使い方を巡って教員たちの間で話し合いをしていますが、曜日を決めて放課後に先生の立ち会いの下、キャッチボールができるようにもしていきたいと話しています」

親からもいろいろ言われて……

 なんとか子供たちに大谷グローブを届けたいという教員たちの思いもあって、この学校では丸く収まったのだが、今なお紛糾している学校は少なくないという。 「平等に使わせなきゃいけない、みんなが使えるようにしなきゃいけないという前提がどうしてもあって、その方法を巡って頭を悩ませている学校は多いと聞きます。それとやはり安全面ですね。軟式のボールでも危ない、休み時間に自由に使わせられない、といった意見はよく聞きます」  こうした学校側が使用に対して頭を悩ませるケースだけでなく、保護者からの意見によって紛糾するケースもあるようだ。都内の小学校に勤務する30代の女性教諭は、保護者からの意見にウンザリしたという。 「子供がケガをしないようにしてほしいという意見が来るのは想定してましたが、早く使わせろ、どうやって使うんだ? 私はこうやったらいいと、自分の意見を押しつけてくる親御さんも何人かいて、全部の意見をまとめるのには疲れました。こんなに現場が混乱するならいらなかったんじゃ……とも思いましたね」
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大谷グローブに対する先生たちの本音
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グルメ、カルチャー、ギャンブルまで、面白いと思ったらとことん突っ走って取材するフットワークの軽さが売り。業界紙、週刊誌を経て、気がつけば今に至る40代ライター

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