ぶん殴り合いをやっても、次の日には…
──長い巡業での大切なガス抜きの機会なんですね。
藤原:前田なんか俺にも絡んでくるからな(笑)。
──そうなんですか(笑)。
前田:藤原さんと酒を一緒に飲むと、必ず俺が先に酔っ払うからさ、すごく嫌がるんだよね。俺が酔っ払って「藤原さん、頭突きお願いします!」とか言って、最初は「やらねえよ」って嫌がるんだけど、俺があまりにもしつこいから、軽くゴツンと頭突きすると、「藤原さんの頭突きはそんなもんじゃないです! もっと真剣にやってください!」って言ったりして(笑)。
藤原:ホントにアホだよ、コイツ(笑)。でも、昔はおおらかだったよな。酒を飲んでぶん殴り合いをやっても、次の日には「あれ? なんだお前、その顔は?」「そっちもずいぶん腫れてますけど、どうしたんですか?」「バカヤロー、お前が殴ったんだろ!」みたいなことが、ごく普通にあったからな。俺と荒川さんが酔っ払って殴り合いをして、人がいい坂口さんが「まあまあ」って仲裁に入ると、間違ったフリして坂口さんを殴っちゃったりな(笑)。昔はそんなことばっかりしてたけど、後腐れなんてなんにもなくて楽しかったよ。
前田:そういう雰囲気のなかで俺は新弟子時代を過ごしたんで、だから熊本の旅館でやった宴会でも、武藤と「ジャンケンして勝ったほうが殴ろうぜ」ってやってんだよ。
──巡業中のレスラー同士の宴会では普通の話というか(笑)。
前田:普通の話だよ。だから「前田が武藤をイジメてひどい」みたいなことを言うヤツがいるけど、違うよ。
藤原:あん時は武藤も思いっきり殴ってたもんな。前田がバーンとぶん殴ったあと、「さあ、俺を殴ってみろ!」って言ったら、武藤は「先輩を殴れませんよ」って言ってたのに、数歩下がったと思ったら、ダーッと助走をつけて殴ってたから(笑)。
前田:あの時に髙田が俺を羽交い締めにしたんですよ。
藤原:そうだったっけ?(笑)。それで武藤に殴られた前田が、並んだ御膳の上にバシャーンって倒れてグチャグチャになってさ。
──あの殴り合いは、武藤さんが「前田さん、あんたのプロレスはつまらない」って言ったのがきっかけと言われてますけど。
前田:ウソだよ、そんなの言ってないよ。
──言ってないですか。
前田:言えるわけがないじゃん。あの時、そんなことを言ってたら殺してるよ(笑)。アイツ、すごいホラを吹くんだよ。カッコつけてさ。
藤原:まあ、プロレスラーらしいよな。殴り合いだって、レスラー同士はただのコミュニケーションだからな。