パナソニックが「黒字なのに1万人リストラ」を進める残酷な理由
パナソニックホールディングスが、全体の5%に相当する1万人規模の人員削減を発表し、世間を騒がせました。一番の驚きは「パナソニックが赤字ではないこと」です。
黒字にもかかわらずリストラを進めた理由は、年金問題と決して無関係ではなさそうです。株式市場において、現役世代が年金の犠牲者となる構図が浮かび上がります。
「資本市場のクジラ」と呼ばれる巨大ファンドをご存じでしょうか? 運用する資産が巨額で、株式市場に大きな影響を与えることで知られています。この異名を持つのが、日本の公的年金の資産運用を行う「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」。運用総額は258兆円で、世界最大の年金基金です。
2001年度から2024年度第3四半期までの収益額は164兆円に及んでいます。そのうちの利子・配当収入(インカムゲイン)は55兆円。残りのおよそ110兆円は株式や債券などの資産の売買差益であるキャピタルゲインです。
GPIFの日本株の比率は12%程度でしたが、第2次安倍政権のアベノミクスによる株価の高騰を背景に、2014年を境に、25%程度まで引き上げました。GPIFは2025年度以降も日本株の比率を維持する方針を固め、基本的にこの先5年間は変わりません。
つまりこの先もGPIFという1つの組織で、65兆円もの巨額資金が日本株に投じられるのです。GPIFには「賃金上昇率+1.9%」という運用目標が課されています。これは公的年金の保険料収入と年金給付が賃金水準に応じて変動するからで、賃金上昇率を上回る成果を出さなければなりません。なお、目標値は2025年度から0.2%引き上げられました。GPIFには高いリターンを出すことが求められているのです。
2023年、東京証券取引所は上場企業に対して、「株価を意識した経営改善」を行うよう要請しました。特にPBRが1倍を下回る企業に対して、具体的な株価対策を行うよう働きかけているのです。PBRとは株価純資産倍率のことで、株価が1株当たりの純資産の何倍であるのかを示しています。1倍を下回るということは、理論的には会社を解散した方が、価値が高いことを表しています。
日本の株式市場における低PBR問題は深刻。プライム市場で約45%の企業がPBR1倍を下回る一方、アメリカのS&P500では3%ほど、ヨーロッパのストックス600では20%にも達していないと言われています。こうした状況から、日本の市場は海外と比べて魅力に乏しいとされています。
東証は2024年10月に「投資者の目線とギャップのあるポイントと事例」を公開。株価対策が不十分であることや、投資家との目線のズレが生じているケースを列挙しました。取り組みの甘い企業を痛烈に批判したことになります。

画像はイメージです
日本の年金基金は「65兆円分の日本株」を運用中
日本の市場は海外と比べて魅力に乏しい
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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