無配慮な報道が原因で“家バレ”し、自宅に住めない状況に陥ることも…「性犯罪の加害者家族」を待ち受ける“茨の道”
性犯罪の加害者家族は、メディアでもたびたび大きく取り上げられます。
2016年、有名女性俳優の長男である俳優が、宿泊先のホテルで従業員の女性に性的暴行を加えて怪我をさせたとして、強姦致傷の疑いで逮捕されました(のちに示談が成立し、不起訴)。
※本記事は『夫が痴漢で逮捕されました 性犯罪と「加害者家族」』(朝日新聞出版)より、抜粋・一部編集したものです。
母親は息子が勾留されている警察署の前で報道陣の取材に応じ、「申し訳ございませんでした」と頭を下げ、その後、謝罪会見を行いました。その際、彼女はカメラの前で涙ながらに語りました。
「自分なりに精いっぱいやったつもりですが、このようなことになった以上、何もいえることではないと思っています。私の育て方が悪かったと思っています」
「(被害女性に対して)もし自分の娘だったら、と考えなければいけない*1」
この発言からは、「私の育て方が悪かったのではないか」と母親が自分を責め、社会からも責められている姿が浮かび上がります。また、息子に憤ると同時に、同じ女性として「(息子が)被害者にひどいことをした事実を受け入れられない」という感情も抱いています。
この報道を受け、女性俳優をCMに起用していた企業の一部は放映の差し止めを決定。それまでバラエティ番組にも引っ張りだこだった彼女の姿は、その後しばらくテレビから消えることになりました。
たしかに息子の逮捕は俳優である母親を連想させ、その母親を起用した企業イメージにも影響が及びます。また同様の被害に遭い、苦しんでいる人たちへの配慮とみなすこともできますが、「それでも事件を起こしたのは、母親ではなく息子だ」という点から、賛否両論が巻き起こりました。
性犯罪の加害者家族がメディアの過熱報道にさらされるケースもあります。
かつてNHK紅白歌合戦にも出演した人気ロックバンドの元メンバーが、性犯罪により12年間の服役後に出所し、2020年に再び逮捕されました。
この事件が報じられてすぐ、加害者が妻と住んでいた自宅にマスコミの記者が多数訪れ、近隣に取材を行ったことから、妻は自宅に住めない状況に陥ってしまったといいます。さらにこの自宅住所を詳細に掲載した新聞社や、ぼかし入りとはいえ住居の写真を掲載したウェブメディアもありました。
長年、この事件を取材していた月刊誌『創』の編集長・篠田博之氏は、ウェブメディアの記事で「家族の住所は暴くわ写真は載せるわというのでは、(マスコミは)いくら何でも自分たちの報道の暴力性に無自覚すぎる。犯罪者を叩いているつもりが、実際にはもうひとりの被害者でもある妻ら家族を攻撃しているという、その現実を自覚してほしい」と、過熱報道の危険性を指摘しています*2。

画像はイメージです
「私の育て方が悪かった」カメラの前で謝罪した女性俳優
過熱報道で近所に拡散、自宅を追われる
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精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などの依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、2000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数
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