更新日:2021年09月08日 17:30
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「スマホで撮れば盗撮じゃない」盗撮犯のあきれた妄想を、専門家が解説する

 卑劣で巧妙な性犯罪である盗撮。スマートフォンや安価な小型カメラの普及もあってか、検挙される件数はここ10年で倍増している(※)。その手口はますます巧妙化しているという。被害者のダメージはもちろん、自分も逮捕されれば大きなものを失うにもかかわらず、なぜ彼らは盗撮を続けるのだろうか。
盗撮

写真はイメージです

 これまで2000人以上の性犯罪加害者の治療に携わった精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏(大船榎本クリニック)は、近著『盗撮をやめられない男たち』で盗撮の実態を明らかにした。榎本クリニックで治療する盗撮加害者521人の調査も行っている。加害者はなぜ盗撮に走り、やめられないのか。そのワケを『盗撮をやめられない男たち』より抜粋、構成した。 ※盗撮事犯の検挙件数  2010年:1741件→2019年:3953件(警察庁生活安全局調べ)

盗撮犯の多くが抱える「認知の歪み」

 盗撮行為がエスカレートしていく理由のひとつに、「認知の歪み」が挙げられます。これは盗撮だけでなく、痴漢、窃盗症など依存症者に共通していえることです。私は「認知の歪み」を「問題行動を継続するための、本人にとって都合のいい認知の枠組み」と定義しています。  彼らは、口では「もうこういうことはやめたい」と言います。問題行動をやめたいし、罪の意識を心の中では感じているのです。しかし一方で「問題行動を続けたい」とも考えています。  そこで、こういった問題行動をやめられない罪悪感から一時的に目をそらせるために、自己正当化する理論を洗練させていった結果、本人にとって都合のいい 「認知の枠組み」を作りだしていくのです。

根底にある女性蔑視と男尊女卑

 この「認知の歪み」は日本の社会状況のもとで学習したものです。偏った思考の根底には、女性蔑視や男尊女卑の価値観があり、この価値観自体をアップデートしない限り保存されたままで、女性をモノとして見る認知は変わらないでしょう。  このように、加害者と社会は互いに補い合う関係にあります。当事者が語る認知の歪みには一定のパターンがあり、不思議なことにどれも似通っています。そして根底には、前述した女性をモノ化する価値観や、「NO MEANS YES(嫌よ嫌よも好きのうち)」といった価値観が存在します。
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唖然とする言い訳は認知の歪みから
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精神保健福祉士・社会福祉士。大船榎本クリニック精神保健福祉部長。1979年生まれ。大学卒業後、榎本クリニックでソーシャルワーカーとして、アルコール依存症をはじめギャンブル・薬物・性犯罪・DV・窃盗症などの依存症問題に携わる。専門は加害者臨床で、2000人以上の性犯罪者の治療に関わる。著書に『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』『盗撮をやめられない男たち』など多数

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