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東京五輪空手代表・西村拳被告に実刑判決。スマホの自撮り動画が“動かぬ証拠”となった「性的暴行事件の全容」

 9月1日、大阪地裁は準強制性交等致傷などの罪に問われた東京五輪の空手組手代表、西村拳被告(29)に対し、懲役3年の実刑判決を言い渡した。判決によると、西村被告は2022年11月19日未明、大阪府東大阪市の自宅マンションで、酒に酔って抵抗できなかった知人女性(当時25歳)に対し、性的暴行を加え、ケガをさせた罪に問われていた。

動かぬ証拠となったスマホ動画

「多くのメディアでは詳しく書かれていませんが、西村被告のやったことはかなり悪質です。自らが撮影したスマホの動画で明らかになったんですが、女性の臀部を開き、後背位で肛門性交を行う様子がはっきりと写っていた。それが動かぬ証拠となって、逮捕に至りました」(在阪の社会部記者)  西村被告は女性との行為を「合意の上だった」と主張。この点が裁判の争点となったが、大阪地裁の伊藤寛樹裁判長は「動画の中の被害者の反応はほとんどが単純で反射的。体を起こし、支えるのも困難な状態だった」と認定し、「被告人が被害者の人権を無視して性欲を満たそうとした違法性や責任の程度は軽く見られるものではない」と断罪した。  ただ、問題は被害者の女性が動画にある行為をまったく覚えていないことだった。スマホの動画の中では、カメラを向けられた女性が顔を隠すシーンが写っているのだが、「何か光がこちらを向いていることはわかった。でも、何もできなかった。今の状況がどういうことなのかも分からなかった」と言うだけだった。

撮影した動画は自分が楽しむため

2人が最後に立ち寄ったシーシャバーが入っていたビル(大阪市中央区)

 被害者女性の供述を受けて、西村被告は以下のように主張した。 「事件前日の夜から、大阪・ミナミで女性と2人で酒を飲んだのは事実です。3軒はしごして、タクシー乗り場に行ったとき、彼女は千鳥足ではなかった。私の自宅マンションで肛門性交したことも間違いないが、合意の上だった。撮影した動画は自分が楽しむためで、SNSなどに流すつもりはなかった。彼女が主張するような2回目の肛門性交や口腔性交はしていません。朝起きてからはキスをしたり、されたりしました」  翌朝、タクシーを呼んでもらった女性が西村被告の自宅を出たのが午前7時50分。女性は自宅に帰ってから〈拳君、無事着いたよ。昨日は迷惑かけちゃってごめんね。いろいろ手配してくれてありがとう。今日のゴルフコンペファイト!〉というLINEを送っていた。これも西村被告が「合意の上だった」と主張する材料になった。  その後、女性は友人らに相談し、大阪府警布施署に被害届を提出した。産婦人科を受診したところ、肛門擦過傷で全治1か月と診断された。さらに精神科では抑うつ神経症と診断された。
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「早く終わってほしい」被害女性の証言
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ノンフィクションライター。1969年生まれ。三重県出身。週刊各誌で執筆。著書に『実録 性犯罪ファイル 猟奇事件編』『実録 女の性犯罪事件簿』。別名義でマンガ原作も多数手がける

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