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「広大な土地を持つ地主=悠々自適な資産家」は間違い!?「地主」のリアルな収入事情と悩み

 2024年、Netflixオリジナルドラマ「地面師たち」が大きな話題となった。地主になりすまして売却をもちかけ、多額の代金を騙し取る不動産詐欺を行う「地面師」の犯罪を描いた作品だ。 「地主」と聞くと、広大な土地を持つ裕福な資産家というイメージを持つ人も多いかもしれない。実際、地主とはどのような人たちなのか? また何から収入を得ているのか? 『借地の真実』(マネジメント社)などの著書を持ち、「地主の参謀」として地主専門のコンサルティングを行う松本隆宏さんと、資産税専門のコンサルティング・ファームであるタクトコンサルティングの髙木駿さんに「地主とはどのような人たちなのか」を聞いた。  二人とも地主の家系に生まれ、地主について精通している。ともすると、土地持ちで悠々自適な暮らしをしているイメージのある地主だが、必ずしも経済的に余裕があるわけではなく、地主ならではのさまざまな悩みや課題に直面しているという。

「地代」や「家賃」が主な収入

――地主というと田舎で広い土地を持っている地元の名士というイメージがあるのですが、そもそも「地主」とはどのような人々なのでしょうか? 髙木:一般的に「地主」を定義しようとすると、所有する土地を貸し付けて、地代収入を得る人のことを指します。江戸時代や明治時代など、先祖代々昔からの土地を引き継いできている家系が多いと思います。また、エリアは地方だけでなく、中には東京の一等地の地主さんもいます。 松本:私たちの祖父母くらいの世代が不動産を大量に買って、息子、孫へと受け継いでいる比較的新しい世代の地主もいます。割合でいうと、やはり先祖代々の土地を受け継いでいる方が多いと思います。 ――地主というと「土地持ちの資産家」というイメージもあるのですが、地主はどのような収入を得ているのでしょうか? 髙木:そもそも不動産は、土地と建物に分かれます。地主で一般的に多いのは、地主が所有している土地を貸し出し、その土地を借りた借地人が自身の自宅を建てているケースですが、借地人がマンションやアパートなどを建てているケースもあります。借地人がマンションやアパートなどの収益物件を建てているケースでは自分が所有する収益物件から「家賃収入」を得ることができ、地主は土地を貸している対価として「地代」をもらうことができます。 松本:地主は、所有している土地を貸して得る「地代」や、地主自身が収益物件を建てて得る「家賃」が主な収入源と言えますね。実際には資産はあっても流動資金が少なく、経営に悩むことも多いです。  私も地主家系の長男で、地主に共通する悩みを多く見てきました。地主の家系は「守る意識」が非常に強く、外部の情報を警戒しすぎる傾向があります。そのため、専門家のアドバイスを受けずに問題を抱え込んでしまうケースが多いですね。 髙木:「誰々が騙されて財産を失った」といった失敗談が広まりやすいので、慎重にならざるを得ないのでしょうね。実際に相続争いで泥沼化したケースや、不動産投資に失敗した話も少なくありません。  親が亡くなると兄弟間の関係も変化します。結婚して配偶者が加わると、それぞれの家庭の経済的な価値観が違うため、主張の衝突も起こりやすい。結果として、遺産分割や資産運用においてトラブルが発生しやすくなります。 ――具体的に、どのようなトラブルが多いのでしょうか? 髙木: 昔は原野商法といって、「この土地は将来開発されるから値上がりする」と言われて購入し、今も更地のままのケースもあります。私の顧客の中にも、過去にそのような土地を購入してしまい、現在も北海道や富士山麓の土地を持っている方もいますが、ほとんど活用されていません。  ほかにも賃貸需要があまりないエリアで一部のハウスメーカーからの提案を鵜吞みにして収益物件を建築してしまい、稼働状況がよくない“負動産”となってしまっているケースも散見されます。 松本:地主は「資産家」と見られやすいので、さまざまな投資話や保証人の依頼が舞い込みます。私の祖父も、騙されて契約書にサインしてしまったことがありました。このような苦い経験があるのも、ウチだけではないのではないでしょうか。

実は資金に苦心している地主は多い?

――親や先祖代々の土地を受け継ぎ、人生安泰のイメージがある地主ですが、地主の課題にはどのようなものがあるのでしょうか? 髙木:地主に多いのは、先ほど申し上げたような、自分の土地に別の人(借地人)がマンションやアパート、戸建てなどを建てているケースです。一番収益性が高いのは、建物を持っていることなんですね。  ですから、地主からすると、なるべくその借地人からこの土地の権利を買い戻して、完全所有権にして、建物も自分で建てたほうがいいんです。ただ、当然ですが、その建物を持っている建物所有者、借地人さんがいると「どいてくれ」とは言えません。 松本:土地を持っていて貸し出していても、実はそれほど収益は上がらないですし、毎年の固定資産税も払わなくてはいけないですし、相続するときには相続税もかなり取られるので、土地を完全所有権にするなどして、その権利を調整することが必要になります。 髙木:そうですね、権利関係が調整できて完全に自分の所有になってから、自分でアパート、マンション、戸建て貸家などの建物を建てて貸し出すと収入が増え、しかも安定するので、そういったしっかりとした土地活用ができれば一番理想的ですね。 松本:建物所有者と土地の地主は違うケースはたくさんあります。昔に先祖がよかれと思って貸してあげていたら、いつの間にか賃貸物件を建てて、建物所有者は家賃を稼いで、こっちはろくに地代ももらえない。そんな気の毒な地主さんも都内には多くいます。広大な土地を持ってお金持ちで悠々自適というようなイメージとはまったく異なる地主さんは非常に多いですね。 髙木:例えば、もともと農家で土地をたくさん持っていた地主が、その土地を貸してあげていたとします。借地人がそこに建物を建てて、今その土地の価値が1億円になっているとしましょう。  この場合には、建物を持っている借地人に借地権(地代を支払うことで一定期間土地を利用する権利)が帰属することになり、その価値は場所によっては土地の価値の6~7割相当にもなります。つまり、土地を貸していたのに、地主がその土地を買い戻そうとすると、6000万~7000万円を借地人に払って買い取らないと自分の所有権にならないんです。 松本:古い地主さんだとこのようなケースが複数あってなかなか大変なので、髙木さんのような不動産に特化してコンサルティングをする税理士や専門の不動産業者などのプロの方が入って、「組み替え」といって借地人さんと交渉して、土地の権利関係を調整する必要があるんです。 髙木:そのような借地を数十件と持っている方だと、どんなふうに組み替えていけばいいのか、もう手の付けようがないケースもあります。そこで、「ここは買い戻して自分で収益物件を建てよう」とか、「逆にこっちのエリアは売って、別のエリアに資金集中させて収益の安定化を図りつつ、管理しやすいようにまとめよう」とか、大きな絵を描いてあげてあることが大事になります。 松本:この土地を売った資金でこっちの土地を買い戻すとか、銀行の融資を受けてマンションを建てたり、大局を俯瞰することで、地主にあった解決策を考える人が必要になります。 髙木:最初の状況からすると所有する土地の総面積は減るかもしれませんが、「収益力」は逆に上がるようなことも往々にしてあります。
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地主に寄り添い、プロフェッショナルをまとめる専門家の重要性
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