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“もう信じない”と“まだ信じる”の狭間で…宗教3世が語る本音。隠された傷と葛藤の記録

 創価学会の勢いに陰りが見えるように、新宗教はどこも衰退傾向だ。そんな中「生まれながらの信者」宗教3世は信仰をどう捉えているのか。彼らの信仰への価値観を垣間見た。

生まれたときから信者=宗教3世の主張とは?

宗教3世[もう信じない/まだ信じる]の肖像

やまざきさんは「祈らない、信仰心のないお前に価値なんてない」と幼少期から両親に繰り返されてきた

 ’22年、安倍晋三元首相が旧統一教会信者の母親を持つ山上徹也被告に殺害された事件を機に、注目された宗教2世。  事件後、信仰心に疑問を持つ者が多く現れたとされ、新宗教の衰退の一因になった。そして今、新宗教の存続のカギを握るのが宗教3世と呼ばれる若者たちだ。  宗教学者の島田裕巳氏は、宗教3世が多い団体に、創価学会と天理教の名を挙げる。 「歴史が長くて組織が大きい宗教団体に、自ずと宗教3世は多くなる。ただ、自ら積極的に入信した宗教1世が宗教に関わる動機が明確なのに対して、親が信者だから入信した2世、3世の信仰はどうしても薄くなってしまう」  こうした宗教3世が脱会していけば、当然、新宗教の力は弱まっていく。創価学会会員の宗教3世のやまざき想太さん(仮名・30代半ば)も、“信じない”となった一人だ。 「幼い頃から、僕が何か失敗したり、悩んだりしていると、父は決まって『ご本尊に祈らないからだ!』と否定的な言葉を繰り返しました。『お題目をあげないからよくないことが起こる』という言葉は、僕にとって呪い同然でしたね」

家族の絆と信仰の自由が天秤にかけられてしまう

宗教3世[もう信じない/まだ信じる]の肖像

※画像はイメージです

 成人して社会に出て、そして結婚してからも、父親の態度は変わらなかった。 「妻や子供を連れて実家に帰ると、父が学会に勧誘するんです。妻は宗教と無縁で、結婚する前に『私は入らないよ』と約束していたので、父に『やめてくれ!』と頼みましたが、何度も衝突して父と疎遠に。メンタルも病んでしまい、宗教活動から離れ、10年ほどは実家に寄りつかなくなりました」  ただ、やまざきさんはまだ、信じてはいないが脱会はしていない。 「多くの宗教3世は、いい信者でいれば親子関係は良好だけど、そうでなければ関係は悪化する。子供の頃に熱心に信仰していたのも、振り返れば、親の愛情が欲しかったから。今は一切活動してないので脱けたいけど、脱会届を出せば引き留めてくるのは明らか。仮に脱会したら親子関係は完全に破綻する。怖くて、及び腰になってます」
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新宗教に信者の悩みを解決する機能はない
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