父親の“献金総額”は1億円。「自分の家は貧しい」と思っていた宗教2世の人生…地元にいると「なぜ献金しないんだ」と迫られる
2022年7月8日、奈良市で銃撃され絶命した安倍晋三元首相。殺人などの罪で起訴された山上徹也被告は、犯行動機として世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)に対する恨みをあげた。この衝撃的な事件を契機として、世間は宗教2世たちの苦しみを知ることとなった。
現在は主婦として平穏な家庭を持つ田中浩子さん(仮名・40代)は、「まったく他人事とは思えない。自分の性格上、誰かを殺すことはないけれど、自死を考えたことなら数え切れない」と振り返る。彼女が調べた限りでは、旧統一教会信者だった父親の献金総額は1億円を優に超えている。宗教に翻弄され続けた2世としての半生に耳を傾けた。
田中さんは大阪府に生まれた。一般に知られるように人情豊かな街で、ご近所との交流も盛んだったという。だが心温まる行き交いが地獄への入口だった。
「もともと父方の家系に病気の人も多く、早く亡くなる人も多かったんです。それを心配した近所のおばさんが、『ここに行けば元気になるから』と教えてくれたんだそうです。それをきっかけに、父と祖母は入信しました。ちょうど、私が産まれる前後のころだったと聞いています」
田中さんの父親は地元で不動産業を営んでいた。いわゆる辣腕で、事業の調子は上向き。本来ならば金銭的に困ることはなかったはずだった。
「自分の家は貧しいと思って生きてきました。“長屋のぼっとん便所”なんてよく言いますが、本当に我が家はそれでしたから。もちろん、父の顧客に貸すアパートやマンションのほうがずっと立派でした。両親ともに入信していたので、旧統一教会に関連する会合などで忙しく、放置されることもしばしばありました。近所の人がおにぎりをくれたりしたので何とか餓死せずに済みましたが、幼稚園くらいからは自分でお米を炊いてお漬物と一緒に食べたりもしていましたね。風呂にも滅多に入らず、汚らしい子どもだったのだろうなと思います」
父と祖母が入信したきっかけは…
「自分の家は貧しい」と思っていた
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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