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「“都会での努力”は、地元では評価されない」職場で年越し、帰省すると説教。年末年始が憂うつなワケ

―[年末年始の憂鬱]―
 年末年始は、親戚や友人との再会や恒例行事が重なる一方で、思わぬ出来事に直面する人もいる。楽しいはずの時期が、予想外の展開で忘れ難い経験となったケースも少なくない。  今回は、年末年始という“おめでたい”雰囲気のなか、厳しい現実を突きつけられたという2人の体験を紹介する。

正月ムードのBGMと大晦日の売り場

百貨店 田中健太郎さん(仮名・40代)が百貨店に勤務していた頃、年末年始は一年でもっとも忙しく、同時に切なさを感じる時期だったという。 「世の中が浮き立つぶん、私は逆に現実を突きつけられる感じでした」  今でも強く記憶に残っているのが、数年前の大晦日だ。本来なら家族と紅白歌合戦を見て、年越しそばを食べながら一年を振り返る時間だが、田中さんは百貨店の売り場に立っていた。  クリアランスセールと初売りの準備が重なり、福袋の山をかき分けながら売り場の入れ替え作業に追われていたのだ。 「店内はもう正月用のBGMに切り替わっているのに、売場だけが全然追いついていませんでした」  マネキンを動かし、什器を並べ替え、商品を詰め直す。時計を見る余裕もなく、気づけば年が変わっていた。 「今年も終わるなぁって、しみじみする瞬間は一切なかったです」

仕事始めの通勤電車は“貸し切り状態”

 そして1月2日。まだ空が暗い時間帯に、田中さんは仕事始めのため電車に乗り込んだ。 「乗った瞬間、ちょっと笑っちゃいました」  複数車両が連なる電車に、乗客は田中さんひとり。完全な“貸し切り状態”だった。 「このまま終点まで寝ても、誰にも起こされないんじゃないかって思いましたね」  静まり返った車内で、年始らしさよりも、これから始まる長い一日を思い、気が重くなったという。職場に着くと、初売りの福袋を求める客の列がすでに伸びており、開店と同時に売り場は一気に慌ただしくなった。 「昼ご飯はもちろん、水を飲む時間もなかったです」  初売りでにぎわう売り場を動き回るうち、田中さんのなかで“年末年始”という感覚は、いつの間にか消えていたそうだ。  その日の夜、仕事を終えた田中さんに、妻から電話が入ったという。何気ない会話が続いたあと、こんな報告が続いた。 「地元のスーパーのスタッフさんに、『お父さんいないのね、大変ね』って言われた。完全に母子家庭だと思われていたみたい……」  仕事で行けなかっただけなのに、年始早々、思いがけない誤解を背負わされてしまった。 「笑うしかなかったけど、地味に傷つきました」  結局、その年末年始をどう乗り切ったのかといえば、特別な方法があったわけではない。淡々と仕事をこなし、終わるのを待つしかなかったという。  それでも今では、家族が集まるたびに、笑い話として語られるようになった。
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“都会での努力”は、地元では評価されない
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2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。

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