更新日:2026年03月26日 12:44
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「ペンネーム選びは慎重に」漫画家・にくまん子が語る10年越しの本音。かつての“衝撃の活動名”と顔出しを止めた理由

「恋愛には、ある種のSF的な魅力を感じているんです」  多くの女性の胸を抉り、「わかりすぎる」と圧倒的な共感を集める漫画家・にくまん子。マッチングアプリ、曖昧な関係、言葉にされない好意――。現代のリアルな恋愛模様を鮮烈に描く彼女だが、意外にも本人は自らを「恋愛をどこか客観的に、フィクションのような不思議な現象として捉えている」と語る。
0302_にくまん子先生①

団扇のイラストは新連載『恋のカスと愛のクズ』に登場する「悶子」

 同人誌での活動を経て『泥の女通信』(太田出版)で商業誌デビュー。その後、『恋煮込み愛つゆだく大盛り』(KADOKAWA)など話題作を続々と世に出している。現在は「マンガSPA!」にて『恋のカスと愛のクズ』を連載中。  ダメ恋から抜け出せない30代女性・沼々煮(ぬまぬまに)しずみと、地球人の恋愛を観察する謎の宇宙人・悶子(もんこ)の交流を描く作品だ。なぜ「当事者」ではない彼女が、ここまで正確に現代の恋愛マインドを掬い取れるのか。その独自の視点に迫った。 【試し読み】⇒『恋のカスと愛のクズ』第1話「侵略!?不純異性フォーユー」

『恋のカスと愛のクズ』マンガSPA!で連載中

同人活動から「ビッグウェーブ」に乗って商業デビュー

――まずは、漫画家になるまでの道のりを教えてください。 にくまん子:中学・高校時代は漫画が大好きなオタク女子でイラストを描いたりしていたのですが、大学受験あたりで界隈からはいったん離れています。でも進路が落ち着いてきた段階で、改めて趣味が欲しくなり、二次創作での同人活動を始めました。その後、オリジナルでストーリーを考えるようになったんです。  デビューの経緯としては、ネットで作品を発表しながら、同人誌として即売会で頒布する……という流れでした。そこから、SNSや同人発の作品がそのまま商業連載へ繋がるという、近年の業界のビックウェーブに乗せてもらった形ですね。2018年にデビューし、今でも商業の舞台で描けることは、純粋に嬉しく思っています。 ――一度聞いたら忘れないペンネームですが、いつ頃から使っているのですか? にくまん子:実はこれ、同人活動をしていた頃からの名前なんです。当時は友人と一緒にサークル参加をしていて、私は「からあげ子」というペンネームで、サークル名は「ホットモット」でした(笑)。その後、個人名義を新しく考える際、唐揚げの次に好きな食べ物が肉まんだったので「にくまん子」にしたんです。 ――商業デビューの際、改名の打診などはなかったのでしょうか? にくまん子:商業1年目くらいの時に、ある出版社から「からあげ子に戻さないか」と打診されたことはありました。でも結局そこでお仕事することはありませんでしたし、他の編集部からは何も言われなかったので、そのまま今に至ります。  今の名前のまま、芸人さんやアーティストさんにメディアで作品を紹介していただいたこともあるのですが、特にトラブルもなくて……。むしろ「本当にこの名前で大丈夫?」と私の方が心配なくらいなんです(笑)。当時はこんなに長く使うつもりはなかったのですが、気づけばもう10年。これからデビューする方は、ペンネーム選びは慎重にすることをお勧めします。

作品への没入感を守るため、あえて「顔」を出さない

0302_にくまん子先生②――顔出しをせずに活動されていますが、そこには何か理由があるのでしょうか。 にくまん子:実は出していた時期はあるんですよ。SNSで酔っぱらった時にブレブレの自撮りをアップしたり(笑)。でも、それは止めました。漫画を読んでいる人の中で、「あの女が描いているのか」なんて、私の顔がチラつくのはノイズになってしまうから。今は作品を描きたい以上、積極的に出すものではないと思っています。  それに、昨今の事情を鑑みると怖いじゃないですか。写真をアップしただけで場所を特定されたりもする世の中になっていますし、顔はもう明かせないです。 ――リアルな人物描写が特長ですが、ご自身の経験が反映されているのでしょうか? にくまん子:いえ、むしろ恋愛経験は薄いんです(笑)。経験豊富ではないからこそ、想像力を働かせているっていうのはあるかもしれませんね。  そもそも、恋愛をテーマに描き始めたのも、自分がその土俵に立てないというコンプレックスからなんですよ。恋愛にSF的な魅力を感じているというか。「こんなドラマがあるのかな~」って想像をするんです。 ――他人の恋愛体験を参考にすることもありますか? にくまん子:摂取はしたいです。昔はよくDMで恋愛相談をされていて、「上司と7年不倫しています」とか「風俗でとんでもない女性に会いました」とか、漫画には描けないようなエピソードも多くて、かなり刺激になりました。  私は作品を“物語”として描きたいという思いが強くて、「こうしたら良かったのかな」という“if”を描くことで、そうしたエピソードや感情を自分なりに昇華している感覚があります。
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時代の変化とともに変わった“世の中の恋愛観”
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