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NBAの常識を破った高学歴アジア系選手の凄さとは?

6月21日のNBAファイナル第5戦、マイアミ・ヒートがオクラホマシティ・サンダーを下しチーム史上2度目のファイナル制覇を遂げた。今季クリーブランド・キャバリアーズからマイアミに移籍したマイケル・ジョーダン2世と騒がれ、2003年のドラフト全体一位でプロ入りしたレブロン・ジェームスは、キャリア9年目で悲願の初優勝を果たした。

 しかしNBAの2011-12年シーズンを振り返った時、人々の記憶に最も強烈なインパクトを残したのは、ヒートでもレブロンでもないだろう。今季、突如としてブレークした台湾系アメリカ人選手、ジェレミー・リンの活躍だ。

⇒【前編】はこちら http://nikkan-spa.jp/240993
【NBA】ハーバード大卒のアジア系選手が全米で話題に

◆「希望を持たせてくれた」日本代表・松井啓十郎が語る、リンのスゴさ

松井啓十郎

リンの大学時代をよく知る、松井啓十郎選手(日本代表・トヨタ自動車アルバルク)

 JBL(日本バスケットボールリーグ)のトヨタ自動車アルバルク所属で、大学時代にリンとの対戦経験がある“KJ”こと松井啓十郎選手は、リンのスゴさを語った。

 高校時代からアメリカへ渡り、大学は名門アイビーリーグのコロンビア大へ進学した松井選手は、当時ハーバード大学だったリンと計6度対戦、対戦成績は松井選手の「5勝1敗」。チームがとりわけ強かったという印象は薄く、リン自身についても「普通にうまかったが、NBAに行くことなど絶対にないと思っていました」と語る。

 リンと松井選手が所属していたのは、過去の多くの大統領経験者らも通った名門大学で構成されるアイビーリーグである。勉学が中心のアイビーリーグからはNBAなどのプロスポーツに進む者は少ないが、ハーバード大の出身のリンはその数少ない同リーグ出身者である。

 ところが、そんなリンが実際にNBA入りし、ニューヨーク・ニックスで先発。負けが込んでいたチームを連勝に導いた光景に松井選手は、「いやぁ、スゴいとしか言いようがない。失礼ながら、彼があそこまでやれるの!? という感じです」とその衝撃に興奮気味だ。

 実はリン以前にも、ヤオ・ミン(元ヒューストン・ロケッツ、中国人)に代表されるNBAで活躍したアジア人はいたものの、ほとんどが210cm以上の長身選手ばかりだった。だが、ガードポジションのリンの身長は191cm。リーグでは低い部類で、身体能力も取り立てて高いわけではない。

 日本代表経験もある松井選手の目にも、リンが活躍したことは不思議だったようだ。「僕たちも行けるんじゃないの? といった感じで希望を持たせてくれましたね」と、身長のないアジア人でもNBAに行けるのではないかという夢を持たせてくれたと語る。

◆「偏見の壁を打ち破った」

 そんななか、アメリカ合衆国教育長官のアーン・ダンカン氏も、「リンの活躍は偏見の壁を打ち破った」と称賛した。

「リンが認められるのは、プロスポーツにとっても良い事。個人を称えることが多い中、リンはチームの勝利しか考えていな い。アジア系アメリカ人だろうが、白人だろうが黒人だろうが、ヒスパニック系だろうが、もはや関係ない。リンはチームの戦術を理解し、勝利のためにプレーすれば、周囲の偏見を変えるだけのチャンスが与えられることを証明してくれた」とも。

 あいにくシーズン終盤のケガに泣いたリンは、逆転で進出したプレイオフでの出場機会はなかった。今季のニューヨーク・ニックスの戦いは、王者マイアミ・ヒートを苦しめながらも惜敗に終わり終焉。多くのファンは「もし、リンがいたら……」の想いを胸にしていたという。

 リンが起こした何重ものミラクルと、「リンサニティ」というパワーを秘めた言葉が、経済的・政情的不安にふさぎ込む大都市ニューヨークの停滞感を吹き飛ばしたのだった!

アジア人NBA選手、ジェレミー・リンが巻き起こした「リンサニティ」現象

・ドラフト指名もされなかった全くの無名
・NBAで成功例の少ないアジア系
・ハーバード大卒の頭脳に加え、ニックスの窮地を救う
・『スポーツ・イラストレイテッド』誌の表紙を2週連続飾る
・『Time』誌が選ぶ「世界で最も影響を与える100人」に選出

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<取材・文/NANO編集部
海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団。「日刊SPA!」ではメジャー(MLB)・プロ野球(NPB)に関するコラム・速報記事を担当




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