ジャイアントキリング連発のサッカー天皇杯【3つの問題点】
サッカーの天皇杯といえば「アマチュアクラブがJのクラブを破る」ジャイアントキリングが醍醐味の1つだが、今年はそれがあまりにも多い。J1で優勝争いを演じるサンフレッチェ広島、J2首位のヴァンフォーレ甲府、昨年度天皇杯王者のFC東京をはじめ、コンサドーレ札幌、サガン鳥栖、ヴィッセル神戸などの計6クラブがJFLや地域リーグのクラブに敗れ、2回戦で姿を消した。
天皇杯緒戦の段階では、「Jクラブ対JFLや地域リーグ、学生」という組み合わせが多く、Jのクラブやサポーターにすれば「勝って当然」という空気が生まれ、スタジアムの緊張感はどうしても薄れる。下位クラブがその油断につけこみ、ジャイアントキリングを起こすのが天皇杯の魅力でもあるのだが……2回戦の段階でこれだけ頻発してしまうと「Jのクラブは下位リーグのチームに負けて、そんなんで日本サッカー大丈夫なの?」と、心配になる。
だが、天皇杯緒戦のモチベーションが難しいのは、選手だけではなくサポーターも同じらしい。
「この9月上旬に13時キックオフでやるのが疑問です。この時期のサッカーはナイターが普通でしょ? そりゃあ、学生や地域リーグの選手たちは昼でも試合をしているし、それを考えたら文句言えないかもしれないけど、主催者は観客のことを考えてくれてるのかな? 実際、観客も少ないじゃないですか……」(都内在住の鹿島サポーター・28歳)
確かに2回戦の平均観客動員数は3155人(日刊SPA!調べ)と、J1クラブが参戦しているにも関わらず低調である。筆者もスタジアムで体験したが、真夏の日照りの中、普段のリーグ戦よりも緊張感のない試合に足を運ぶのは正直かなりしんどい。これでは観客がガラガラでも納得してしまう。
ここで、天皇杯の問題を簡単に整理してみよう。
【1】元旦に決勝戦を行う現状日程の問題点
・決勝に進出したチームはオフ期間が少なくなる。さらに代表活動や海外移籍などがあると、実質オフがほぼなくなる選手が出てくる可能性も。
・リーグ戦終了後、既に来季のチーム構想から外れた戦力外の選手たちがそのまま天皇杯に出場を続ける。
【2】2回戦から登場するJクラブのモチベーション
・天皇杯は優勝賞金1億円、ACL出場という大きな魅力があるが、リーグ戦での残留争い、昇格争い、優勝争いと比べて、9月の2回戦から登場してモチベーションを天皇杯に傾けるのが難しいのではないかという疑問点。
【3】会場確保の問題
・今回、ジャイアントキリングが多発したことにより、AC長野パルセイロ(長野県)対横河武蔵野FC(東京)の試合が札幌厚別で、FC今治対町田ゼルビア(東京)の試合が広島ビックアーチで行われるという珍事が起こってしまった。
大雑把なまとめ方をするとこんなところである。現在は元旦の決勝戦を見直す方向でサッカー協会も動いている。日本にプロサッカーが生まれて20年が経ち、由緒正しき天皇杯も、時代の流れに合わせて改革が求められている。<取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>
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