江戸木純でさえドン引きした最凶映画
―[悶絶![トンデモ映画]ベスト42]―
世の中には一般的常識をはるかに超えた映画がある。超大作のはずがトホホな感じだったり、芸術的すぎて意味不明だったり、エログロすぎて正視できなかったり……。そんないろんな意味で“すごい映画”を選者がセレクト。秋の夜長に、ぜひお試しあれ!
【江戸木 純】
’62年生まれ、映画評論家兼プロデューサー。『死霊の盆踊り』『ベルリン忠臣蔵』などのカルト映画をはじめ、数百本の宣伝を担当。近著『世界ブルース・リー宣言~龍教聖典~』
◆異常だけど面白い。それがトンデモ映画だと思います
手前味噌ですが、まずは私が配給会社に勤めていた頃に宣伝を担当した『死霊の盆踊り』。カップルが墓場に迷い込み、ミイラ男と狼男に捕まっちゃうんです。そこでなぜか女幽霊たちのストリップショーを延々見せられる(笑)。ただそれだけの映画。ひたすら単調なんですけど、だんだんトランス状態に入っていく感覚に浸れます。
『悪魔の毒々モンスター』は、基本はコメディだけど、悪いヤツは殺してしまえ!と一貫した主張が面白くてね。有害廃棄物タンクに落ちちゃったいじめられっ子が怪物になって、いじめっ子をぶち殺すという、ある意味タイムリーな映画。日本公開時には残酷なシーンをモノクロ処理したほど描写がエグいところも見どころ(笑)。この2本はカルト映画マニアの間では必見とされている作品ですね。
ほかの3本は香港映画。’90年代初頭に起こった過激な成人指定映画ブームの作品です。なかでも有名なのが『八仙飯店之人肉饅頭』。中華料理店の店員が店主一家を皆殺しにして、それで肉まんを作っちゃうという狂気を描いていて、これが映画的にも傑作。’94年の香港アカデミー賞で主演男優賞を受賞したほどなんです。
この監督と主演俳優がさらにひどいことをやったのが『エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス』。主人公の殺人犯が香港からアフリカに逃亡して、現地の人をレイプしちゃう。その被害者がエボラにかかっていたから主人公も感染してしまうんですが、なぜか特異体質で大丈夫(笑)。終盤、香港に戻った主人公が「エボラ、エボラ!」と叫びながらツバをぺっぺっと吐いてウイルスをまき散らしたあげく、警官隊に銃殺される。観終わったあと立ち上がれないくらいパワフル。中国返還後の今の香港では製作不可能でしょうね。
でも、描写のひどさは『実録 幼女丸焼き事件』が一番かな。主人公の男が裏社会の抗争に巻き込まれて、娘が元人民解放軍の殺し屋に誘拐されちゃう。で、ハリウッド映画なら子供は助かるのがお約束だけど、娘は殺されてしまうんです。主人公は黒焦げになった娘を抱きしめて犯人を追いかけるけど、途中で首がもげちゃって……。さすがの私も引きましたね(笑)。
日本人じゃ到底真似できないパワーですよ。反日デモで暴徒化してしまう人たちの根底にある精神や感性を、この3本を通して学べるかもしれません(笑)。
私はトンデモ映画って、いい意味で使ってます。異常だけど面白い。実際、これらは10人中7~8人が嫌な顔をしても残りの2~3人は観たいと思う、いろいろな“価値観の違い”を楽しむ作品。そこを狙ってちゃんとビジネス的にも成功していますから。
<江戸木 純氏が選んだトンデモ映画>
『死霊の盆踊り』(’65)
製作・監督/A・C・スティーブン、出演/クリスウェル、ファウン・シルヴァーほか
『悪魔の毒々モンスター』(’84)
監督/マイケル・ハーツ、サミュエル・ウェイル、出演/アンドリー・マランダほか
『エボラ・シンドローム/悪魔の殺人ウィルス』(’96)
監督/ハーマン・ヤオ、出演/アンソニー・ウォン、ワン・イェンミンほか。DVDは現在廃盤
『八仙飯店之人肉饅頭』(’93)
監督/ハーマン・ヤオ、出演/アンソニー・ウォン、ダニー・リーほか。DVDは現在廃盤
『実録 幼女丸焼き事件』(’93)
監督/ビリー・タン、出演/ケント・チェン、ダニー・リーほか。劇場未公開、DVD未発売
― 悶絶![トンデモ映画]ベスト42【3】 ―
―[悶絶![トンデモ映画]ベスト42]―
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