みうらじゅんの人生を変えた1本のトンデモ映画とは?
―[悶絶![トンデモ映画]ベスト42]―
世の中には一般的常識をはるかに超えた映画がある。超大作のはずがトホホな感じだったり、芸術的すぎて意味不明だったり、エログロすぎて正視できなかったり……。そんないろんな意味で“すごい映画”を選者がセレクト。秋の夜長に、ぜひお試しあれ!
【みうらじゅん】
’58年、京都府生まれ。イラスト、マンガ、エッセイ、小説など幅広い分野で活躍。著書『そこがいいんじゃない! みうらじゅんの映画批評大全』シリーズ(洋泉社)発売中
◆ 『人間の條件』を克服してからは、どんな映画も面白く観れますね
角川春樹の『蒼き狼』を観たときはクラッときました。周りで観たヤツはオレしかいなかったんじゃないですかね。いきなり保阪尚希がモンゴル人役で出てきて堂々と日本語しゃべるところから抜群でした(笑)。最後、群衆が「チンギス・ハーン! チンギス・ハーン!」ってコールするシーンも、エキストラのモンゴル人があっちこっち向いていてとても面白かった。
最近では『LOVE まさお君が行く!』がハードル高かった。それと『わさお』と『犬のおまわりさん 3D』が昨今の犬モノ3部作。ぜひおすすめします。修行としてはすごくいいですから。
3部作といえば、はやぶさ3部作も観てほしいですね。竹内結子モノとケン・ワタナベモノ、そして藤原竜也モノ。全部映画館で観ましたけど、オチわかってるってスゴイと思いました。どれか一本ぐらい、はやぶさ宇宙から帰ってこないんじゃないかと思ったけど、全部帰ってきたからね。もう、ここははやぶさに感情移入して観てもらうのがいいでしょう(笑)。
昔はこういう映画を観るのは苦行だと言われましたが、今は修行ですから、人生の。というのも『人間の條件』というハードルを乗り越えたから。全部で10時間ぐらいある映画で、高校のときに一挙上映を観に行ったんだけど、途中でリタイアして帰っちゃった(笑)。それがずっと心残りだったんで、30歳ぐらいのときにビデオを買ってすべて観たんです。シベリア抑留の話なんで特に面白いことなんて起こるわけないでしょ。山寺の階段を一歩一歩登っていく感じで、こちらが無になっていく修行でした。同じシベリアでも『シベリア超特急』とはハードルの高さが違いますから。シベ超は水野さんが出てるので面白いでしょ。アレを克服してから、どんな映画も面白く観れるようになりましたね。
この手の映画を観るとステージが上がるし飲み屋で話題に事欠かないですよ。「何観てんだよ」ってツッコまれるだけですけど。でも、普通のやつも並行して観なきゃダメ。「『バイオハザード』と比べると『わさお』は……」なんて言って周りをポカンとさせてください。
<みうらじゅん氏が選んだトンデモ映画>
『蒼き狼 地果て海尽きるまで』(’06)
製作総指揮/角川春樹、監督/澤井信一郎、出演/反町隆史、菊川怜、若村麻由美、袴田吉彦ほか
『LOVE まさお君が行く!』(’12)
監督/大谷健太郎、出演/香取慎吾、広末涼子、成海璃子、光石研ほか。DVDは11/30発売
『わさお』(’10)
監督/錦織良成、出演/薬師丸ひろ子、きくやわさお(秋田犬)、甲本雅裕、鈴木砂羽、吉永淳ほか
はやぶさ3部作
『はやぶさ/HAYABUSA』(’11)、『はやぶさ 遥かなる帰還』(’12)、『おかえり、はやぶさ』(’12)
『人間の條件』(’59~’61)
監督・脚本/小林正樹、脚本/松山善三、稲垣公一、出演/仲代達矢、新珠三千代、淡島千景ほか
― 悶絶![トンデモ映画]ベスト42【1】 ―
『そこがいいんじゃない!みうらじゅんの映画批評大全2006-2009』 みうらじゅん氏の目から見た“あの映画”の評価とは!? |
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