巨人が12球団の雄だった時代は終わった【清武英利×玉木正之】その2

清武英利(元読売巨人軍取締役球団代表)×玉木正之(スポーツライター)

渡邉恒雄会長による「球団の私物化」に異を唱え、巨大組織の暗部を告発した清武英利氏と「我々の敵はナベツネだ!」と’04年の球界再編時以来、一貫して主張を続ける玉木正之氏。一時は“犬猿の仲”と噂された2人が初邂逅。熱き野球愛を語った

⇒【前編】はコチラ「マスメディアのスポーツチーム所有は最悪だ!」

玉木正之氏,清武英利氏

清武英利氏(写真左)と玉木正之氏(写真右)

清武:僕は警告を放てないジャーナリズムこそが問題だと思います。

玉木:構造的に放てないんじゃないですか。メディアがメッセージを送り出すときに担う役割は3つ。報道、批評、啓蒙です。「野球という面白いスポーツがあるよ」と知らせるのも報道機関の仕事。でも文章で説明するのは回りくどいからやってみせたほうが早いし、やったら儲かる。新聞を売るための道具になる。その時点でジャーナリズムが機能しなくなった。

清武:長いスパンで言うと新聞業も絶滅危惧種です。「和菓子屋さんのようなもの」だと。なくならないけど、ケーキや他のお菓子のジャンルのひとつになるという人もいます。同様に巨人が12球団の雄だった時代は終わり、12分の1になりつつある。守ろうとする側は頑なだけど、現実は後退している。企業を表に出せば出すほど、時代に淘汰されるスピードは上がっています。

玉木:その時に巨人だけが衰退するのではなく、日本のプロ野球全体が衰退してしまうのは問題です。

清武:それで、’04年8月、日韓米で「野球W杯」を開催しようと会議が開かれた。でもアメリカは「これはW杯ではなく、MLBとMLB選手会が日韓を招待する大会。それが不満なら招待しない」と言い放ったんです。その脅しに負けて、本来は「野球のW杯」を目指さなくてはならないのに、MLBの思惑を通してしまった。

玉木:WBCの第1回大会の概要が発表された’05年の夏、日本チームは最初、不参加をMLBに連絡しました。その時MLBのある筋から僕に電話があって、「日本で一番力が強い人はナベツネさんですか?」と聞かれた。「ナベツネさんを説得したらWBCに参加できますか?」と。「イエス」と答えるほかなかった(苦笑)。そして読売がアジア予選の興行権を手に入れて日本は参加した。

清武:しかも’04年の会議ではアメリカは「第1回は時間がないので自分たち(MLB)でやるが、次は未定」と言ったそうです。しかも「2回目以降は各国で話し合う」ということだった。僕らはそれがW杯の礎石だと思っていたのに、いつまでたってもWBCのままなんです。

玉木:WBCは春。夏はオールスター、秋はワールドシリーズ。MLBは3大クラシックにしたかった。しかも日本は2連覇したにもかかわらず、トップ選手の多くがMLBに奪われてしまった。

清武:第3回の今回はいろいろと言うチャンスでしたけどね……。

玉木:読売の利権が移っただけ。

【玉木正之氏】
’52年、京都府生まれ。ミニコミ雑誌の編集者等を経て、フリーの雑誌記者に。スポーツライター、音楽評論家、放送作家等の後、現在はスポーツ評論家として活動中

【清武英利氏】
’50年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者、東京本社編集委員等を経て’04年読売巨人軍球団代表。’11年11月球団代表を解かれた

取材・文/小島克典(元ライブドア・フェニックスGM) 
撮影/渡辺秀之 写真/産経新聞社
― 日本プロ野球への緊急警告【2】 ―




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