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マスメディアのスポーツチーム所有は最悪だ!【清武英利×玉木正之】

清武英利(元読売巨人軍取締役球団代表)×玉木正之(スポーツライター) 渡邉恒雄会長による「球団の私物化」に異を唱え、巨大組織の暗部を告発した清武英利氏と「我々の敵はナベツネだ!」と’04年の球界再編時以来、一貫して主張を続ける玉木正之氏。一時は“犬猿の仲”と噂された2人が初邂逅。熱き野球愛を語った
東京スポーツ

「清武の乱」騒動時、清武氏が玉木氏から“敵前逃亡”したと伝える『東京スポーツ』('11年12月1日号)。本対談まで、2人は、この“遺恨”で双方が嫌っていると思い込んでいたという

玉木:「敵の敵は味方」と思って一度お会いしたかったんです。 清武:うまいこと言いますね(笑)。 玉木:清武さんのGM時代、僕は評論活動中心でしたが、もしも現場で取材していたら清武さんともケンカする運命だったでしょうね。ストライキの時「我々の敵はナベツネです」と断言してましたから。僕はフリーランスで取材活動を始めたからこそ、巨人がプロ野球を支配している矛盾に早くから気づきました。’93年にJリーグが生まれた時、これは「日本で初のプロスポーツ組織だ」と断言できた。ではプロ野球は何なのか? それは企業野球だと。企業の宣伝だから都市対抗野球と一緒でプロと自称しているだけ。それをマスメディアの読売が支配している。ユニフォーム組は別として、巨人という存在は否定するほかない。 ◆V9ナインに「バカヤロー!」と怒鳴ったナベツネ 玉木:川上さんの参謀だった牧野茂さんの本に書かれている話ですが、V9時代は優勝すると読売新聞の本社内を優勝旗を持って下から上まで行進したんですって? 清武:そんなことがあったの!? 玉木:地下の印刷所なんか長嶋や王が来るから、工員が大拍手で、川上監督も大喜び。ところが7階の政治部に行った時「バカヤロー、早く出て行け」と怒鳴られる。その中心がナベツネだとか(笑)。 清武:企業スポーツというのは、社員を一つに束ねる力がある。その瞬間の誇りを共有できるのに、手放すのはもったいないですよね。 玉木:確かにそうですが、マスメディアのチーム所有は最悪ですよ。 清武:日本のプロ野球は新聞社が先導したという歴史的事実は揺るがないと思います。重要なのはチャイニーズ・ウォール(情報障壁)が機能しているか否かなんです。巨人に問題があれば、それをきちんと指摘できる記者がいるか。公正に判断できる編集局があるか。今の読売は編集と営業が一体となっているからダメなんです。 玉木:つまりジャーナリズムとメディアが一体化している。メディアはあくまで情報を載せる媒体で、ジャーナリズムはメディア経営から独立していなければならないのに、メディアが営業として野球チームを持つと、スポーツジャーナリズムの放棄に繋がりますよね。 清武:その恐れは常にある。だからこそ、営業のために批判ができない新聞社であってはならないんです。自分の会社の別会社のことは、きちんと批判できる体質をジャーナリズムは持たなくては。 玉木:アメリカの場合は「マスメディアがプロチームを持ってはならない」という不文律がある。イギリスはもっと顕著で、BスカイBのオーナーが「プレミアリーグを買う」と言い出したら議会が反対した。一方、日本では、織田幹雄がオリンピックに出る時から、取材費の節約もあり、新聞記者として遠征費をもらう「癒着」があった。ただ、今もメディアがスポーツの現場と癒着してスポーツジャーナリズムが機能しない。 清武:僕は警告を放てないジャーナリズムこそが問題だと思います。 【後編】に続く⇒巨人が12球団の雄だった時代は終わった!
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【玉木正之氏】 ’52年、京都府生まれ。ミニコミ雑誌の編集者等を経て、フリーの雑誌記者に。スポーツライター、音楽評論家、放送作家等の後、現在はスポーツ評論家として活動中 【清武英利氏】 ’50年、宮崎県生まれ。立命館大学卒業後、読売新聞社に入社。社会部記者、東京本社編集委員等を経て’04年読売巨人軍球団代表。’11年11月球団代表を解かれた ― 日本プロ野球への緊急警告【1】 ―
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