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知っておきたいメジャーリーグ「暗黙のルール」

 4月1日、ヒューストン・アストロズvs.テキサス・レンジャースのゲームでMLBの’13年シーズンが始まった。先のWBCでもいろいろ論じられた、日本のプロ野球と世界の野球の差。レギュラーシーズンの戦いを見ても、顕著な場面があり、日本人から見ると理解できない「暗黙のルール」があるのは確かだ。MLBや世界の野球を観る上で、頭に入れておくべきルールを挙げてみよう。 ◆大量リードでのバントは報復の対象に  WBC第1ラウンドのメキシコ対カナダ戦で、両チーム総出の乱闘があったことは記憶に新しい。実は、その原因となったのは、なんと“バント”だった。  9回表、カナダは9対3と大量リードしていたが、第1ラウンドは総当たりで勝敗数が同じなら得失点率が第2ラウンド進出のカギ。(事実、韓国は第1ラウンドB組で台湾・オランダと同じ2勝1敗だったが、得失点差で敗退)。それでカナダは1点でも多く取りたいとバントを決めたのだが、これがすでに1敗して、背水の陣だったメキシコ・チームの逆鱗に触れた。
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※YouTubeより(http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=zQFL4eW104Q)

 アメリカ周辺の野球文化では、「大差で勝っているチームはバントはしない」というのは不文律。「セコ過ぎる」あるいは「死者に鞭打つ行為」ととられてしまうのだ。メキシコのピッチャーが次打者に死球をぶつけるという、MLBなどでは伝統的な報復行為に至った。すでに殺気立っていた両チームは大乱闘を演じてしまったのだ。 ◆ホームラン後の派手なガッツポーズはNG!  ホームランを打っても派手なガッツポーズなどは「相手投手に失礼」ということでNG。(しかし、サヨナラ勝ちの場面や、緊迫した延長戦などではOK、というのがいかにもアメリカ的か)。ホームランで試合途中、派手に喜びまくったりすると、特に打たれた投手がベテランの一流、打ったのが若手だったりすると、「生意気だ」と思われて死球をぶつけられる。  今は昔に比べて、感情を素直に表現する選手たちも増えたので、いちいちぶつけてられないということか、超高額な年俸の選手たちにケガをされては球団側は大損というのもあり、「危険球=即退場」というルールがかなり厳しく施行されているせいか、このようなことは減ったようだが、昔の投手は打者がガッツポーズなどしなくても「連続本塁打を打たれてムカつくから」ぐらいの理由で球をぶつけたりもしていたとか……。 ◆走者がマウンドを通って塁に戻ると……  数年前にオークランド・アスレチックスのダラス・ブレイデン投手が、ニューヨーク・ヤンキースのアレックス・ロドリゲス選手にブチ切れて、記者らに文句をこぼしたことがあった。ロドリゲス選手が一塁走者で、次打者のロビンソン・カノ選手がファウルを打った時、三塁近くまで走っていたロドリゲス選手は、一塁に戻る時にピッチャーマウンドを横切って行ったというのだ。これには、「え、ダメなの?」と驚いた人が多かったようで、記者たちも他の選手らに聞き回ったのだが、「普通そんなことはしない。投手に失礼だ」、「そんなNGは聞いたことがない」と賛否両論を巻き起こした。プレイする選手たちも知っていたり知らなかったり、思い込みだったり、まさに不文律と言えるような事件だった。 ◆目には目を、死球には死球を! 「死球」というのは「武器」の代わりのような一面がある。例えば、Aチームの打者に対してBチームの投手が内角高めの顔に近い危険な球を投げたとしたら、Aチームの選手たちは自軍の投手がBチームの打者にぶつけるか、やはり内角の危ない球を投げて「報復する」ことを期待するそうだ。(実際に、四番打者がやられたら、相手の四番打者か、同等クラスの選手を狙う)。あるいは、走者が併殺を防ぐためや得点するために、野手の足を狙った危険なスライディングをした場合にも、チームメイトたちは投手が「報復する」ことを期待するそうだ。  かつてニューヨーク・メッツやセントルイス・カージナルスに在籍したことのあるジョー・マクユーイング選手が激しいスライディングを受けて骨折した時、投手は迷わずスライディングした選手の次打席で死球をぶつけ、即退場になった。病院に向かう途中で死球のことを聞いたマクユーイング選手は、「スター選手でもない自分のためにやってくれたのか」と目を潤ませていたとのこと。  実はマクユーイング選手はスターではなかったけれど、いつでも一生懸命で思いやりがあり、チームメイトたちに愛されている存在であったこととも関係があったよう。  ドデカい選手たちがブンブン投げ、打ちまくるのがメジャーの野球のようですが、実は奇妙な不文律があったり、浪花節的な側面もあったり……。そんな一面を知りながら、MLB中継を楽しんでほしい。 <取材・文/NANO編集部> 海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団
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