60歳が「14歳の感性」を取り戻す方法があった。日常に“刺激”を感じたいなら
新しいことに挑戦しても、なんだか刺激を感じられない……。年を取るほどに日々に新鮮味や生きがいが感じられず、そんな状況に陥ってしまう人は決して少なくない。「でも、それは脳の仕組みに過ぎない」と語るのは、脳科学者の黒川伊保子氏だ。
60歳のトリセツ』(黒川伊保子著)から、「脳に刺激を与えて、感性を取り戻す秘訣」を紹介したい(以下、同書より一部編集のうえ抜粋)。
14歳は、感性の完成期に当たるので、ヒトは14歳の感性で一生生きていく、と言っていいと思う。
14歳のときに出逢った(脳に飛び込んできた)音楽、ことば、アート、憧れの人物などは、一生、脳を元気にしてくれる。アーティストやミュージシャンに「14歳のときに、何に出逢ったか」を聞くと、その人のルーツがわかるとも言われていて、「14歳の出逢い」は本当にバカにできないのだ。
ザ・ハイロウズの『十四才』という曲の歌詞の中に、こんなフレーズがある。―
あの日の僕のレコードプレーヤーは、少しだけいばって、こう言ったんだ。いつでもどんな時でもスイッチを入れろよ、そん時は必ずおまえ、十四才にしてやるぜ(甲本ヒロト作詞)。
14歳の脳を知っている私には、このフレーズにしびれるしかない。この曲には、14歳のヒロトがロックに心臓を射抜かれた瞬間の描写(おそらく)がリアルに描かれていて、私の胸を締め付ける。私がロックに出逢った瞬間も、まさに心臓を射抜かれたから。私の場合は14歳よりも少し遅かったけど。そのヒロトも、一昨日(2023年3月17日)、還暦を迎えたという。彼は今でもきっと、14歳のままなのに違いない。
ロックのそのビートの中にいるとき。あなたもぜひ、14歳の自分に再会してほしい。
60代になって、最近心を動かしてないなと思ったら、14歳のときに心ふるわせたものに再会してみてほしい。
15歳、大人脳の始まりと共に、私たちは容赦なく、生態系の大きな競争に巻き込まれた。
食べていくための闘い、よりよい生殖のための闘い―これらは、酸素という、細胞を老化させる物質に満ちた星に生まれ、生殖によって命をつなぐ宿命を余儀なくされた生物の一員として、避けられない闘いだった。より美しく、より強く、より賢く―誰よりも正しくあって、誰よりも重要な人物でいたい。そんな焦燥感に駆られながら。
しかし今、その呪縛から解放されて、自分自身の人生を生きるターンがやってきた。
闘いに駆り出される前の、14歳の脳に戻っていいのである。そして、なんと、戻れるのである。美しいもの、わくわくするもの、そして心臓を射抜くものに心酔したあの日々に。
あの日、あなたは、何に心を奪われたの?
現在、64歳の黒川氏がまとめた、60代以降が日々を楽しく過ごすために必要なメソッドをまとめた『日々に不満を感じるなら、14歳の自分に再会しよう
15歳以前の「闘いに駆り出される前の脳」に戻ろう
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(株)感性リサーチ代表取締役社長。1959年生まれ、奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に従事、2003年現職。『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』がベストセラーに。近著に『息子のトリセツ』『母のトリセツ』
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『60歳のトリセツ』 64歳の脳科学者が伝えたい脳の秘密 |
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