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MLB日本人選手所属チームを分析【レンジャーズ編】

◆今年こそ悲願のワールドシリーズ初優勝なるか!? MLB, ダルビッシュ 2010年・2011年とアメリカン・リーグを連覇しながらワールドシリーズで敗退。昨年はレギュラーシーズン最終戦で西地区トップの座をオークランド・アスレチックスに奪われ、ワイルドカードとなってボルチモア・オリオールズとのたった1試合のプレーオフに敗れ去るという衝撃的な幕切れとなってしまった。  その後オフシーズンには主砲ジョシュ・ハミルトンをフリーエージェントで、やはりチームの中心選手の1人だったマイケル・ヤングをトレードで放出しながら、レンジャースファンが期待していたような大型フリーエージェントとの契約もなく、いささか不安なままに迎えた今季の開幕だった。  それがフタをあけてみると西地区2位以下をぶっちぎりの快進撃。さてこの快進撃の理由は、そしてこの快進撃は続くのか。 ◆若く、頼れる投手陣  この快進撃の大きな理由の1つは言うまでもなくダルビッシュ有投手をはじめとする投手陣の頑張りだ。5月14日時点でレンジャースのチーム防御率3.45はア・リーグ2位、もちろんア・リーグ西地区では断トツの1位。そして今やエースと言えるダルビッシュと、デレク・ホランド投手は今年27歳、アレクシ・オガンド投手30歳、先発ローテーションの残る2人、ニック・テペシュとジャスティン・グリムは共に25歳のルーキーと、先発投手陣が若い。  またダルビッシュ、ホランド、オガンドの3投手は昨年中盤までの快進撃と、終盤もたついた末に首位の座を奪われ、たった1試合でプレーオフが終わってしまうという苦渋も共に経験しているので、その雪辱の思いも分け合っているはずだ。  2人のルーキーはグリム投手が4月2勝0敗防御率1.59、17イニングを投げて15奪三振という好成績でア・リーグ月間新人賞を受賞したが、5月に入った途端3連敗。テペシュ投手も4月は2勝1敗防御率2.53だったのが5月の最初2回の登板ではいずれも5点を献上して負けがついてしまった。  と言っても、そもそも新人投手が2人も先発ローテーションに入っているのは、コルビー・ルイス、マーティン・ペレス、マット・ハリソン投手らが故障者リスト入りしているからなのだ。だからそれらの選手たちが復帰した時には、レンジャースの投手陣は今よりさらに層が厚くなる。そしてブルペンも、昨年非常に重要な役割を果たした上原浩治投手はボストン・レッドソックスに移籍、新加入のジョアキム・ソリア投手は故障者リスト入りしてしまったにもかかわらず、今年も良い働きをしている。 ◆進化を続けるダルビッシュ  昨年もレギュラーシーズン29試合に先発、16勝9敗という1年目にしては上々の成績を残したダルビッシュ投手だが、今季は明らかに進化している。昨年ダルビッシュが三振を取る頻度は9イニングにつき10.4だったのに対し、今季は5月15日現在で13.7。1イニングに四球及び安打で出塁される率は1.28から0.91に下がった。このペースでいけば年間300奪三振も夢ではないと取りざたされているし、実現すれば素晴らしい記録であることはもちろんだが、むしろ評価されて良いのは彼が記者会見で「三振をとる競技ではない」と言い切ったことではないだろうか。  選手が自分の個人記録よりもチームの勝ちを優先しているという態度は、チームメイトの信頼感を生む。それがチームのエース級の投手であれば、なおさらのことだ。常に進化し続ける態度と、信頼感。それが今季のダルビッシュを「エース」と呼ぶにふさわしい存在にしているのではないだろうか。  そんなダルビッシュの課題は投球数。もちろん日本の投手はたくさんの球数を投げることに慣れてはいるが、メジャーリーグのレギュラーシーズンは162試合、先発投手はほぼ毎回中4日で投げ続ける。エース級の投手ならレギュラーシーズンの登板数は30試合以上が期待され、昨季も4人の先発投手が34試合、18人が33試合、イニング数ではトップのジャスティン・バーランダー投手が238.1イニングを投げている。  ちなみに昨季のダルビッシュの登板試合数は29試合、イニング数は191.1と不足とは言えないが、いずれも上位40位にも入らない数字である。ケガや疲労なしで毎回先発ローテーションの責任を果たすためには、投球数が少ないにこしたことはないのだ。ただ、レンジャーズのオーナーであるノーラン・ライアンはそれこそ三振を奪いまくった往年の名投手だったので、ダルビッシュをとても高く評価している。球数が多いのではという質問には「素晴らしい投球をしているのだから、これまで通りにやればいい。もちろん球数は少ない方が良いが、それは重箱の隅をつつくようなものだ。」と頼もしい答えをくれている。 ⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/446700 <取材・文/NANO編集部> 海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団。
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