MLB日本人選手所属チームを分析【レンジャーズ編】<後編>

◆今年こそ悲願のワールドシリーズ初優勝なるか!?  2010年・2011年とアメリカン・リーグを連覇しながらワールドシリーズで敗退。昨年はレギュラーシーズン最終戦で西地区トップの座をオークランド・アスレチックスに奪われ、ワイルドカードとなってボルチモア・オリオールズとのたった1試合のプレーオフに敗れ去るという衝撃的な幕切れとなってしまった。  その後オフシーズンには主砲ジョシュ・ハミルトンをフリーエージェントで、やはりチームの中心選手の1人だったマイケル・ヤングをトレードで放出しながら、レンジャースファンが期待していたような大型フリーエージェントとの契約もなく、いささか不安なままに迎えた今季の開幕だった。  それがフタをあけてみると西地区2位以下をぶっちぎりの快進撃。さてこの快進撃の理由は、そしてこの快進撃は続くのか。 ⇒【前編】「若く、頼れる投手陣」「進化を続けるダルビッシュ」 ◆ピアジンスキ効果  今季フリーエージェントとして1年契約で加入した個性派A.J.ピアジンスキ捕手。彼は2005年シカゴ・ホワイトソックスのワールドシリーズ優勝の立役者の1人だったが、当時のホワイトソックスのオジー・ギエン監督はピアジンスキのことを「敵にしたら最悪、味方ならば少しはましだけど、絶対に頼りになるやつ」と評した。開幕2日目にダルビッシュ投手の「ほぼ」完全試合を演出したが、2007年にはマーク・バーリー投手のノーヒット・ノーラン、2012年にはフィリップ・ハンバー投手の完全試合を経験。わき腹を傷めて5月8日から故障者リスト入りしているが、それまで彼の捕手としての防御率は2.84、2番手のジョバンニ・ソト捕手は4.14だった。 ◆「かつての天敵」バークマンが味方に  指名打者のランス・バークマン選手も新加入だが、彼は2011年にセントルイス・カージナルスの一員としてワールドシリーズでレンジャースと対戦。その第6試合の10回裏、あとストライク1つでレンジャースが優勝という時に、バークマンが同点のタイムリーヒットを放ち、結局レンジャースは延長11回でサヨナラ負け。続く第7試合にも敗れて悲願のワールドシリーズ優勝を逃した。バークマンはその時のことで、新しいチームメイトたちをからかうと言う。  若い選手たちが多いレンジャースに加わった2人のベテラン選手は、いずれも過去の所属チームで、中心選手のひとりとしてワールドシリーズ優勝を経験している。その経験がレンジャースの選手たちに、自分たちも優勝してあんなきらびやかなリング(ワールドシリーズで優勝すると、選手やチーム関係者たちは球団から豪華な優勝記念指輪を贈られるのが習慣)が欲しい! という気持ちをかきたてているのではなかろうか。  その他の攻撃陣では、ハミルトン、ヤング、マイク・ナポリ捕手らが抜けた穴を埋められるのかというのが開幕前の大きな疑問だったが、ここまでを見たところ相変わらずレンジャースの攻撃陣は頼もしい。特に目覚ましい活躍を見せているのが、イアン・キンスラー二塁手と、ミッチ・モアランド一塁手。キンスラー選手の言葉によれば、レンジャースはずっと打高投低のチームだったが、今は投手陣も素晴らしいから、バランスの取れた良いチームになったということだ。 ◆ライバルたち  プレーオフに出場するには、地区1位となるか、各地区1位3チームを除いた各リーグ12チーム中で勝率1位か2位となって、ワイルドカードとならなくてはならない。昨年レンジャースはワイルドカードとなったが、たった1試合のプレーオフでボルチモアに敗退したという苦い思い出があるから、今季は是が非でもア・リーグ西地区を制したいであろう。  西地区では、ヒューストン・アストロズ、シアトル・マリナーズの2チームが首位争いに絡むということは考えにくい。残る3チームのうちのロサンジェルス・エンジェルスは、以前から強い攻撃陣にレンジャースからハミルトン選手が加入し、西地区優勝候補とも見られていたのに、ハミルトン選手や主砲アルバート・プホルズ選手の大不振もあり、5月14日現在で15勝24敗。  オークランド・アスレチックスもぱっとしない20勝21敗だが、この2チームの嫌らしいところは、いずれもなぜかシーズン後半、特に8月以降から急激に勝ちだしたりするところ。レンジャーズはくれぐれも昨年の苦い経験を忘れることなく、浮かれたり驕ることなく、ケガなく地道に勝ち続けていってもらいたい。 <取材・文/NANO編集部> 海外サッカーやメジャーリーグのみならず、自転車やテニス、はたまたマラソン大会まで、国内外のスポーツマーケティングに幅広く精通しているクリエイティブ集団。
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