知識不足では却って不安を招く!「正しい内部被曝検査」を知る

前編はこちら← 設置病院には問い合わせ殺到、避難者以外は検査できないことで不満続出のホールボディカウンター(以下、WBC)。だが、WBCさえ受ければ内部被曝がバッチリわかるというわけでもないようだ。

寝台型。ベッド下にある筒状のものでγ線を計測。正確に測るには最低でも30分は必要。その間、動いてはいけない……

「WBCは体内のγ線を計測するため、γ線源となるセシウム(134、137)、カリウム40、ヨウ素131は計測できますが、計測できない核種も多いんです」 計測についてもかなりの技術を要する。「病院の放射線科にいる医師は、レントゲンやX線CTなどの高線量の放射線を扱っている。そのため、低線量被曝についての知識も少なく、ごくわずかな検出結果から的確な判断を下せるスキルが足りなく、かつ人材が不足しているんです」 検出結果の読み方の理解不足は、受診者の不安も煽る。例えば、冒頭で紹介したツイッターでつぶやいていた男性だ。「この人物がアップしていた計測結果を見ると、計数値が19.46cpmと小さすぎる数値です。  ほとんどゼロといっても過言ではない。また、摂取量も実効線量も計測結果に比べ、誤差の範囲が大きすぎる。定量的とは言えない。これをきちんと説明できないのは医師の力不足だと思います」 福士教授によると、正確な数値を把握するためには少なくとも1万カウントくらいは必要だという。となると、単純計算で500分、WBCで計測しないと正確な数値はわからないことになる  誤差については、例えば1cmの物を測ったけど、目盛りの数値に3m近い誤差があるかもしれない……というようなこと。つまり、「その結果は計測結果として意味がない」のだ。 「また、WBCでストロンチウムが検出というのも、誤作動だと思います。ストロンチウム90はWBCでは測定できない。WBCで測定可能なストロンチウム85は、原発由来の放射性物質には含まれていない核種なので検出されるはずがないんです」 検査をする側も、検査を受ける側も、こうした知識が不足していると、不具合や検出結果の矛盾などを見抜けないまま数値だけが独り歩きし、不安を煽るだけの結果になってしまうのだ。 また、高精度のWBCは機械としても非常にデリケートだ。

WBCにはさまざまなスタイルのものがある。座位で計測するのは簡易型。バックグラウンドの影響を受けやすいのが欠点

「まず正確に測るためには、バックグラウンドの放射線を遮蔽する必要がある。さらに、今までほとんど稼働していなかったため、動作に不安がある機器も多い。WBCはメンテナンスが大変で、校正(線量が明らかな放射線源を用いて、数値を正すこと)されていないと、数値も信用できなくなる」 いろいろと難しいWBCによる測定。しかし、それでもWBCが内部被曝検査の切り札であるのは事実。そのためにも、測定結果の読み方などについて、検査を受ける側も知識を身につけ、無用な不安を抱いたり、拡散しないようにしたいものである。 取材・文/編集部 写真/時事通信社 ― 内部被曝測定装置はどこまで信用できるのか?【2】 ―
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