儲かるのは元請けだけ。建設現場を襲う作業員不足
アベノミクスや東京五輪の決定で、住宅・オフィスビル需要が増え、建設ラッシュに湧いているというニュースをよく聞く。しかし、一方で地方の公共事業では、入札不調が数多く起きている。その原因のひとつが、深刻な建設作業員不足だ。現場ではいったい、何が起きているのか?
◆低予算&短工期! 過剰労働と低賃金でみんな逃げ出した!!
週刊SPA!12/3発売号の特集「[建設作業員が足りない!]の深刻度」では、他にも深刻な人材難に陥る建設現場、その状況が引き起こすインフラ崩壊の未来像に迫っている。 <取材・文/週刊SPA!編集部>
消費増税や住宅ローン減税に便乗する住宅の新築ラッシュ、そして東北復興や東京五輪――住宅建設や公共事業など、建設関係者にとって見通しの明るい要素が並ぶなか、現場では作業員不足の悲鳴が上がって久しい。なぜ建設作業員の成り手がいないのか。
背景にはまず過剰労働がある。住宅向け鉄筋会社に勤務するH氏(43才)は、年末年始、一切休日の予定がない。
「昨年11月以降、戸建建築は例年の1.2~1.5倍ペースで増えてます。だけど営業レベルの短観でも、アベノミクスによる住宅需要は、おそらく来期には収束する。短期的な受注増に対して設備投資なんかできないし、機械を増やせない。だから人を増やしても意味がない。結局、現場は今いる人間で回すわけで、もうパニック」
この数か月、H氏の会社では、朝5時始業、午前0時終業になることも珍しくないという。
「常時、人材募集はしていますが、早いヤツは2日で辞める。残るのは1割未満。工場では3割はベトナム人研修生ですが、勤勉な彼らさえ逃げ出す過剰労働」(H氏)
◆利益を取るのは元請けばかり
受注は増えているのに、なぜ人件費は上がらないのか。工務店を営むMさん(仮名・45歳)は、カラクリをこう解説する。
「不動産会社の営業は『家を建てるなら今でしょ!』と言いますが、大嘘です。確かに資材については新築ラッシュに加えて商社が資材を買い占めて大量に抱え込んでいるために、材木で3割ほど価格が上がってしまっていますが、住宅の本体価格に影響するほど人件費が上がったなんて話は聞かない。例え、本体価格を現場職人の日当5000円分上げたとしても、我々下請けレベルでは日当1000円上がるかどうか。残りの4000円分は、ハウスメーカーが自社利益にする。それで誰も逆らえないのは、いま日本の工務店のほとんどは生産力も技術力も低下して自社で仕事を取ってくることができず、ハウスメーカー専属で仕事をもらっているからです」
実際、パネル工法の建売住宅では、30坪前後の物件を一棟建てて60万円程度というのが、M氏の工務店の大工の単価だという。これで、上物1000万円程度の戸建を作る。低賃金の結果、どこの現場に行っても若手は皆無だ。
「僕らが若い頃、職人の親方といったら、手間(賃金)で月100万円以上、毎晩飲み歩いて外車を乗り回す人がゴロゴロしてました。地元のやんちゃな子が、親方の羽振りに憧れて、住み込みで日給1000円、2000円で修行するという世界があった。でも昨今は親方自身が食うのに精いっぱい。憧れる要素がまったくない」
工務店レベルでは「人を増やさず、会社は一人親方で、職人は派遣にすればいい』という風潮になっているという。
『週刊SPA!12/10号(12/3発売)』 表紙の人/堀北真希 電子雑誌版も発売中! 詳細・購入はこちらから ※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める! |
ハッシュタグ