どうなる?『Moto GP』 海外ライダー「日本に行きたくない」発言の影響 【後編】
―[どうなる?『Moto GP』]―
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これを受け、DORNAとFIMはイタリアの独立機関ARPAに調査を依頼し、7月末に結果を発表する、と決定した。だが、さらにその結果を待たずに、チャンピオン争いをリードするストーナーとホルヘ・ロレンソ(ヤマハファクトリー)の両名が、「調査結果にかかわらず日本には行かない」と言明。これが大きな波紋を呼んだ。彼の所属チームは、危険がないと発表された場合は当然日本に行くと表明しており、選手たちの独断は契約に抵触すると表明。
7月末には、ARPAが日本で独自調査した詳細な結果を発表。ツインリンクもてぎや周辺都市の空間放射線量、市販されている食品や飲料を詳細に調査したデータを公開し、「危険性は無視できるレベルのもの」という結果を発表した。これを受ける形で、DORNAとFIMは予定どおり日本GP開催を正式に発表した。
ストーナーやロレンソの来日拒否発言に対して、ホンダとヤマハは彼らとの交渉を実施。また、前述の調査結果公表なども心理的な影響があったのか、表面的には選手たちの態度は軟化をし始めた。その背後には、熾烈なチャンピオン争いを繰り広げる両選手にとって、ポイントを少しでも稼いでおきたいという事情も働いているだろう。欧州の一部メディアは、ファクトリーやチーム側が契約を盾にとり、立場の弱い選手たちを「恫喝」している、とも報じる。
現在では、バレンティーノ・ロッシ(ドゥカティ)以外の選手は、少なくとも表面的には当初の忌避感をかなりトーンダウンさせている。そのロッシも、9月上旬のサンマリノGPで最終決断する、と明言していたが、決勝レースが終わった段階でも旗色を鮮明にしていない。ただ、現状の雰囲気では、多くの選手がどうやら最終的には来日しそうな様子だ。
今回のMoto GPライダーたちの来日拒否を巡る一連の騒動は、数多くの論点が輻輳しているため、わずかな文字量ですべての議論を尽くすことは到底不可能だ。ただ、最終的な彼らの結論がどのような形に決着したとしても、それを論じる我々の言葉は、まちがいなく我々自身のリスクリテラシーとメディアリテラシーの照魔鏡となるだろう。
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