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電車内の人のニオイに嫌悪感を抱く理由【ニオイの心理学】

スメル・ハラスメント「スメル・ハラスメント」という言葉をご存知だろうか? 直訳どおり「ニオイによる嫌がらせ」なのだが、セクハラ・パワハラと根本的に異なるのが当人には迷惑をかけている自覚がない、ということ。我が身を振り返りつつ、汗ばむ季節の到来に対処していこう。

 本来は「いい香り」のはずが、スメハラとなってしまうこともある、この不思議。東北大学大学院文学研究科准教授でニオイの心理学を専門とする坂井信之氏は、「心理学でバランス理論と言いますが、自分が好きな人ならあばたもえくぼで、その人のニオイも好き、逆に嫌いな人ならニオイも嫌いになるのは自然」だと解説する。

「しかも、私たちは知らない人への警戒心を抱くので、嫌いになる可能性のほうが高い。例えば、電車内の人は、ほぼ皆、知らない人です。その人がこんなニオイをさせたとなれば警戒し、結果、嫌いという判断を下す。そのニオイが強くなるほど、嫌悪感も強くなる」

 一方で、「アロマやフレグランスには『この香りで癒される自分は素敵』という、他者目線での自己像があり、他者からの承認欲求がある」そうで、その自意識も“鼻につく”原因、と思えなくもない。

 とはいえ、ニオイと印象について、こんな興味深い実験もある。

「例えば、優しいイメージとされる甘い花のニオイの柔軟剤をタオルに使ったところ、触り心地がより柔らかく感じられるという結果が出ました。また、マジメなキャリアウーマンが華やかなニオイをつけたところ、より仕事がデキる人に見えるなど、人物とニオイの相互作用によるイメージアップの効果も得られています」

 ニオイに過敏になりがちな日本人に、このような理想的なニオイの使い方はできるのだろうか?

「日本はニオイを排除して“無臭文化”を推し進めてきた。その結果、ニオイに過剰に反応する人が出てきているのが現状だと言えます。極端に言えば、100人いれば100通りのニオイがある。芳香剤ブームも、今はあるべき自分のニオイ、好きなニオイを探している過渡期の現象なのかもしれません」

 このようにニオイは心理学上での活用も期待されるが、さらに医療の分野でも「ニオイと記憶の関連性」が話題になっているとか。

「嗅覚の記憶は、幼い頃から最近の記憶までまんべんなく残っているという特徴があり、さらに感情へのインパクトがほかの感覚よりはるかに強い。一方、ニオイを処理する脳の部位がアルツハイマー型健忘症の障害を受ける部位とほぼ同じことから、健忘症の予防にニオイを使ったり、香りや化粧による症状緩和という効果も注目されています」

※週刊SPA!5/7発売号では、「あなたも加害者?[スメハラ(スメル・ハラスメント)]被害報告リポート」という特集を掲載中。これからの季節、気を付けるべきことが学べるはず!

【坂井信之氏】
東北大学大学院文学研究科心理研究室、准教授。専門は応用心理学で、味覚やニオイのほか、人が商品を購入する心理学などを研究。著書に『食べることの心理学』(共著)ほか

<取材・文/週刊SPA!編集部>

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