「地方路線だからこその自由な企画力」三陸鉄道・南リアス線運行部長インタビューVol.2
「三鉄に乗りたい」――。どちらかが言いだしたか、本誌『週刊SPA!』連載「週刊チキーーダ!」を担当するエコノミストの飯田泰之氏と評論家・荻上チキ氏の2人が、三陸鉄道縦断の旅に出た。その様子は、週刊SPA!7月1・8日合併号をご覧いただくとして、本誌では一部しか紹介しきれなかった、三陸鉄道南リアス線運行部長・吉田哲氏へのインタビューをここに紹介する。
⇒【Vol.1】「三鉄が果たす役割が、これから試される」
飯田:北リアス線、南リアス線と乗ってきて、ともにほぼ満員。北リアスア線については満員なうえ、貸し切り列車も連結されているほどでした。これは、休日ということもあるのでしょうか?
吉田:震災前は、土休日は混んでいたのですが、平日は観光のお客様はあまり多くは乗車されていませんでした。全線運行再開してからは、平日も土休日も関係なく観光のお客様は増えています。
飯田:平日でも乗車される観光客が一定数いる、と。運転再開以降、客足自体は伸びているということでしょうか。
吉田:我々はまず、震災前の数字を目標にしていますが、全線開通以降、その数字に近い乗客数になっています。
高校生の数が減って、定期券での利用者数が減少しているなかで、震災前に近い数字を出せているのは、観光のお客様が増えていることが大きな要因であると思います。
飯田:北リアス線ですと、やはり『あまちゃん』効果というのがあると思いますが、それが少し、沈静化してきたときに、どんな観光のコンテンツを見せていくのか?というのは、どう考えてらっしゃいますか?
吉田:『あまちゃん』ブームは、今年度最初の段階で落ち込んでくるのかなと思っていましたが、おかげさまで続いています。さらに、北リアス線では「こたつ列車」としてお座敷列車を活用し、また車内で名物の「うに弁当」を提供するなど、お客様に喜んでいただいております。南リアス線では、このような定番の名物列車、名物弁当がまだ確立されておりません。
そこで、南リアス線では地元のお客さまに対しての企画列車に力を入れています。例えば、「婚活列車」であるとか、地元のお酒を使った「ワイン列車」「日本酒列車」「ビール列車」などですね。貸切にして、往復2時間。要望があれば地元若手漁業者の協力で途中駅で「ほたて」を焼いて、焼きたてを車内で食べていただいております。
飯田:北は観光客、南は地元ニーズの掘り起こしと、王道の戦略をひとつの会社で同時に使い分けているのは、面白いですね。
吉田:企画列車は、震災前から運行していますが、新型レトロ車両の導入やコラボして下さる企業様の協力もあって、運行本数も増えています。お客様には「地元でもあまり列車に乗る機会はなかったけど、こういう列車は楽しいね」とか、「また参加するので、是非声をかけて下さい。」と、好評をいただいております。そういった地元のニーズに応えていくことで、南リアス線の特長を出していきたいと思っています。
飯田:一度、それが注目されると、リピーター、または口コミというので掘り起こしていける。飲み会は何度やっても楽しいものですからね(笑)。
吉田:また、南リアス線では、個人のお客様の「貸切列車」もやっているんです。盛‐釜石間の往復2時間の貸し切りで新型レトロ車両は5万2千円ですが、半額助成がありますので、2万6千円で借りることができて、使い方はご自由に、というものです。
飯田:そこそこの人数のグループで借りると、通常運賃より安くなる(笑)。
吉田:一人で借りたお客様もいましたし、カップルで乗られて、おふたりの写真を入れたヘッドマークをつけて走ったこともあります。これは、「プロポーズ列車」ということで、男性の方が申し込まれたんですが。
荻上:実際にプロポーズは成功したんですか!?
吉田:いやあ、そこまでは、我々も入れませんので(笑)
荻上:都市型の鉄道だとやりにくい、独自プランをやれる自由さは強みですよね。
吉田:そうですね、飲み物や食べ物も自由に持ち込み自由ですし、とにかく1両貸しします。自由にお使いください、というのが「貸し切り列車」です。
荻上:一両まるまる自由にということは、可能性はいろいろありますよね。
⇒【Vol.3】「三陸鉄道の使命――風化させない、忘れられないために」に続く
【飯田泰之氏】
いいだやすゆき●75年生まれ。エコノミスト。明治大学政治経済学部准教授。『情報満載ライブショー モーニングバード』など、テレビや雑誌等でも活躍。著書に『思考をみがく経済学』『図解 ゼロからわかる経済政策』。共著に『夜の経済学』『エドノミクス』などがある
【荻上チキ氏】
おぎうえちき●81年生まれ。評論家。『シノドス』編集長。毎週月~金曜、22時から『荻上チキ session-22』(TBSラジオ)に生放送出演中。著書に、『未来をつくる権利』『彼女たちの売春(ワリキリ)』などがある
<構成/鈴木靖子 取材コーディネイト/土方剛史>
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