「三陸鉄道の使命――風化させない、忘れられないために」三陸鉄道・南リアス線運行部長インタビューVol.3

「三鉄に乗りたい」――。どちらかが言いだしたか、本誌『週刊SPA!』連載「週刊チキーーダ!」を担当するエコノミストの飯田泰之氏と評論家・荻上チキ氏の2人が、三陸鉄道縦断の旅に出た。その様子は、週刊SPA!7月1・8日合併号をご覧いただくとして、本誌では一部しか紹介しきれなかった、三陸鉄道南リアス線運行部長・吉田哲氏へのインタビューをここに紹介する。

⇒【Vol.2】「地方路線だからこその自由な企画力」

三陸鉄道運行開始の際は、車掌として「悲願の開通」の日に立ち会ったという吉田氏

1984年4月1日の三陸鉄道運行開始の際は、車掌として「悲願の開通」の日に立ち会ったという吉田氏。語られる「三鉄の使命」という言葉が印象的だ

荻上:三鉄は、『あまちゃん』以前から、様々なキャラクターを用いてますよね。それはいつくらいからなんでしょうか?

吉田:イメージキャラクターの「さんてつくん」は随分前からありますし、「久慈ありす」と「釜石まな」という『鉄道むすめ』は、震災前からです。そして、震災から1年後に「田野畑ユウ」「恋し浜レン」という『鉄道ダンシ』を発表したのかな。

荻上:どういったきっかけでキャラクターのアイデアが生まれたんですか?

吉田:「鉄道むすめ」は、すでに全国にありました。それに三陸鉄道も参戦しようということになったもので、「鉄道ダンシ」は、県の担当者から「こういったものもおもしろいんじゃないですか」とアイデアをいただいたんです。

飯田:県からちゃんとした企画提案があったというのはすごいことですね。

吉田:いろいろ仕掛けてくれて、さまざまなご提案はいただいています。それに対して、うちのイメージにあっているものを精査して、進めていますね。

荻上:反応や訴求力はどうですか?

吉田:やはり、「鉄道ダンシ」などは目のつけどころが違うといいますか。パッと見た瞬間に、「女性向けだな」とわかる。我々、鉄道をずっとやってきた人間にとっては、なかなか思い浮かばないところなんですよね(笑)。第三者的な目線を入れていただくというのは、我々にとっても刺激になりますし、ありがたいことですね。

三陸鉄道“非”公式キャラクター「リアルさんてつくん」だ

荻上氏の隣にいるのが、三陸鉄道“非”公式キャラクター「リアルさんてつくん」だ

荻上:ちなみにあまちゃんの、社内視聴率はどのくらいですか?(笑)

吉田:始業点呼を始めるのが8時30分なので、その前に、みんなで朝見てから、仕事に入っていました。で、お昼は休憩時間12時から1時間なので、昼の再放送を見て。私なんかは、出勤前にBSの7時半からの放送を見てから出てくるので、1日3回見てました(笑)。

荻上:実質視聴率100%超ですね(笑)。吉田さんは、どのエピソードが好きですか?

吉田:やはり、震災を取り上げた場面ですね。震災をどう描くのかは、少し前から話題になっていましたが、実際に放送を見たときに悲惨な状況を見せずに、しかし確実に伝えていたと思いました。あの回は何度も繰り返し見ましたけれど、工藤官九郎さんはやはりすごい方だなと思いました。

荻上:見ている側としては、これまでずっと感情移入してきたキャラクターが、その日を迎えてしまう、というので、身内を心配するのと同じ思いで見守ったんですよね。

飯田:『あまちゃん』効果を足がかりに、三陸鉄道全体で取り組んでいる、収益を上げるための新たな事業などは、どんなものがありますか?

大漁旗でお客さんを迎え、そして列車を送り出す

大漁旗でお客さんを迎え、そして列車を送り出す。こうしたおもてなしが、「また、来たい」という思いにつながっていく

吉田:「交流人口の拡大」を進めていて、ひとつには、「震災学習列車」です。列車に乗っていただいて、我々社員が震災の語り部となり、車窓から現在の状況を見ていただいております。直接「見て」「聞いて」「感じて」いただいて、防災のお役にたてればと思い運行しておりますが、これは問い合わせや実績も伸びています。収益面だけでなく、震災を風化させないということも三陸鉄道の使命だと思っています。

荻上:乗車された方の反応は如何ですか?

吉田:テレビの映像などで見ていても、実際に見ると全然違う、とはおっしゃいますね。我々からすると、がれきもなくなり、震災直後とはかなり違う光景になっているんですが、それでも、実際に見た方は「すごかったんですね」とおっしゃいます。

飯田:スケール感は見ないとわからないですからね。

荻上:建物の外壁の津波が到達したラインを見上げる、という体験など、頭でわかっていたことでも、体感するというのは別のものですからね。

吉田:震災学習列車はこれからの防災教育として学校関係者、各方面のリーダーの方々など、利用していただく方々は幅広いです。一方で、ニーズに応じて視察を完全オーダーメイドでプランニングする『三鉄フロントライン研修』という企業や自治体を対象にした企画も行っています。小学生や中学生には漁業体験や農業体験と組み合わせたグリーンツーリズムなども考えていて、とにかく交流人口を拡大させて、内陸から、全国からこちらに来ていただこうという取り組みです。

荻上:南海トラフ地震に備えて、各地の鉄道会社の人がこちらに来て……という交流もあるといいですね。

吉田:そうですね。震災から3年が経ち、復興していると思われている方も多いかと思いますが、まだまだ復旧途上です。風化していくものであることは、我々も理解しています。だからこそ、こちらから、どんどん情報を発信して、現地を見に来ていただきたいと思います。三陸鉄道の沿線がこれから復興していく過程、今年はここが進んだ、来年になって家が何軒建ちました、商店が戻ってきましたといった状況を、やはり見ていただきたいと思います。そのための取り組みが、我々の使命だと思いますし、全線開通に向けて御支援、御協力をいただいた方々への恩返しだと思っています。

三陸鉄道【三陸鉄道】
北リアス線(宮古~久慈)の71.0キロ、南リアス線(盛~釜石)の36.6キロからなる。1984年4月1日、第三セクター鉄道の第一号として運行をスタート。東日本大震災の津波により、駅や橋、線路など317か所に被害を受けるも、震災からわずか5日で、久慈~陸中野田間の運行を再開。2014年4月、全線の復旧が終わり、全線の再開を果たした。「震災学習列車」や「貸し切り列車」等についての詳細は、三陸鉄道公式サイトにて http://www.sanrikutetsudou.com/

【飯田泰之氏】
いいだやすゆき●75年生まれ。エコノミスト。明治大学政治経済学部准教授。『情報満載ライブショー モーニングバード』など、テレビや雑誌等でも活躍。著書に『思考をみがく経済学』『図解 ゼロからわかる経済政策』。共著に『夜の経済学』『エドノミクス』などがある

【荻上チキ氏】
おぎうえちき●81年生まれ。評論家。『シノドス』編集長。毎週月~金曜、22時から『荻上チキ session-22』(TBSラジオ)に生放送出演中。著書に、『未来をつくる権利』『彼女たちの売春(ワリキリ)』などがある

<構成/鈴木靖子 取材コーディネイト/土方剛史>

週刊SPA!7/1・8号(6/24発売)

表紙の人/きゃりーぱみゅぱみゅ

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