雑学

「外れ馬券裁判」の勝訴は競馬ファンには“不利益”な判決だった

競馬場 JRA(日本中央競馬会)の年間売上高は、世界中の競馬団体のなかでも最大規模。わが国公営ギャンブルにおいても文句なしの王様といえるが、その王国に、いま大きな異変が起きている。

 騒動の中心は、中央競馬を舞台にした巨額の脱税事件。その刑事裁判で「外れ馬券は必要経費なのか、否か」が争われており、司法判断を多くの競馬ファンが固唾を飲んで見守っているのだ。

 事件のあらましはこうだ。

 被告は2007年から2009年にかけて、独自の予想ソフトで買い目を抽出し、インターネット経由でパソコンによる自動購入を繰り返した。3年間で計約28億7000万円の馬券を購入し、払戻金は約30億1000万円。黒字額は約1億4000万円にのぼった。だが大阪国税局は、払戻金から当たり馬券の購入額のみを差し引いた約28億8000万円が利益にあたるとし、約5億7000万円を脱税したとして大阪地裁に告発したのである。これに対して被告は、実際に得た利益をはるかに上回る額を課税されてはたまらないと主張し、刑事と民事の双方で争っている。

 この事件を、馬券攻略雑誌『競馬王』編集長の柿原正紀氏に解説してもらった。

「例えば3連単フォーメーションを1点100円づつ計36点買って、50倍が的中した場合を考えましょう。3600円賭けて5000円の払い戻しです。この場合、プラスはいくらですか?」

 小学生でもわかる。プラスは1400円だ。

「でも、所得税法上は、そうではないんです。馬券で得た利益は『一時所得』とみなされます。要は、働いて手にしたのではなく、偶然の幸運ゆえに儲かったお金という意味です。だから、50倍の配当を得るのに要した経費として認められるのは、『その収入を得るために直接要した費用』だけ。つまり、的中した組み合わせの馬券100円分のみ。外れ馬券3500円分は、収支計算に一切反映されず、4900円のプラスに対して課税されるんですよ」

 しかし今年5月9日、大阪高裁は被告が外れ馬券の購入に使ったお金についても必要経費になると認めた。馬券の常識をひっくり返すような判決のインパクトについて、前出柿原編集長は興奮気味だ。

「二審判決はすごい内容です。馬券で得た利益について、行政は今まで画一的に『一時所得』と解釈してきましたが、それは今回の『馬券裁判男』のような馬券の買い方が想定されていなかったからにすぎないと言っているんです。営利目的性および継続性が認められれば、一時所得にはならず、被告人以外の場合でも同様に雑所得とすべきであるとしています」

 営利目的性および継続性とは、聞きなれない言葉である。金儲けを狙う競馬中毒者はみんな該当しそうなものだが……。

「そこは、馬券購入の頻度や、規模で判断されるんです。『馬券裁判男』は、『新馬戦と障害戦を除く全てのレースに投票していた』ことが判決に書かれています。逆に言うと、たまの大レースで、一番人気に大金を一点で突っ込むような買い方をする人の場合、その配当は一時所得とみなされるでしょう」

 一般的なサラリーマンの競馬ファンを例にとれば、配当から当たり馬券の購入金額のみを差し引いた金額が年間90万円を超えた場合、確定申告して納税する必要がある。モデルケースとしては、年間に100万円馬券を買って回収率が90%という競馬ファンだ。10万円負けているのに、一時所得が存在することになる。

 今回の裁判で多くの人が「外れ馬券=経費」と短絡的に認識しがちだが、ここが大きな落とし穴なのだ。つまり、競馬裁判男のように機械的に買い目を算出して、機械的に馬券を購入しなければ外れ馬券は経費にならないわけである。裏を返せば、たまに大勝負に出る一般ファンの外れ馬券には課税されるものであるということが裁判で認められたわけである。

 同じ競馬ファンなのに配当に対する課税の扱いが違うのは不公平ではないだろうか。

「そうです。不公平だと思います。そもそも論から言いますと、競馬の勝ち分に課税すること自体がおかしいんです。われわれ競馬ファンが1年間でJRAに払った2兆4000億円のうち10%は自動的に国庫に納付されます。そして、JRAは1年間競馬を運営して残った純利297億円のうち50%を国庫に納付しています。合計すれば、年間で2500億円も国庫に納めている計算なんです。そのうえさらに勝ち分に課税するのは二重課税でしょう。最近の馬券裁判の事例を通して、われわれ競馬ファンは競馬と税の関係について、もっと声をあげていくべきなんじゃないかと強く思います」

 なんのてらいもなく、「われわれ競馬ファン」と繰り返す柿原編集長。だが、これは競馬ファンだけではなくボートレースや競輪など、ほかの公営競技でも同様のことが言えるだろう。言い掛かりとしか思えないこの裁判の顛末を追った『馬券裁判男の予想法を解明する本』(ガイドワークス)では、裁判の顛末が詳細にリポートされている。また、競馬裁判男の馬券購入術にも本書は言及しており、中身の濃い一冊になっている。

<取材・文/SPA!勝ち馬特捜班>

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