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進む「ドローン規制」。世界各国の状況は?

◆誰もが高性能機を買える今、犯罪者の手にもドローンが!

ドローン

山岳地帯では、ドローンを使って迅速に医療品やワクチンを運ぶ実証実験が始まっている

 無人飛行機=ドローンの実用化は、主に軍事用として進められてきた。イラク戦争からドローンを本格投入しているアメリカは、通称・イスラム国への爆撃にもドローンを使っている。

 そして今や多数のセンサーやGPSを搭載し、自律飛行も可能な、数万円で買える市販モデルも珍しくなくなった。当然、犯罪者もドローンに注目している。

 例えばアメリカとメキシコの国境では、麻薬を運ぶためにドローンを利用するケースが続出。フランスでは、原子力発電所の敷地内を不審なドローンが飛行し、大騒ぎとなった。本格的なテロへの悪用も時間の問題だろう。

 日本も例外ではない。4月には放射能物質を載せた機体が首相官邸の屋上で発見された。15歳の少年が操縦するドローンは、善光寺の祭礼中に落下。数日後には、同じ少年が国会議事堂付近での飛行を試みて問題になったばかりだ。

 悪いニュースが相次ぐなかで、「ドローンを規制すべし」という議論が巻き起こるのは当然のなりゆきだ。そこでドローンの第一人者、千葉大学の野波健蔵・特別教授に世界各国の規制の最新状況と、日本でなされるべき規制について聞いてみた。

◆規制の厳しいアメリカ、寛容なカナダと欧州

「欧米では、数年前からドローンの議論が日本に先行して活発に行われています。ただし、それも政令や法案レベルの話ですが」

 と話す野波教授だが、法制化に関して言えば、日本が著しく遅れているわけではないようだ。

「ドローン先進国のようなイメージがあるアメリカは、ドローン規制の法案が2月に発表されたばかり。その内容は、25kg以上のドローンを認めないというもの。さらに目視できる範囲で飛ばすこと、と規定しています」

 目視できる範囲内でしか飛ばせないとなると、商業用としては使わせないと言っているのに等しい。非常に厳しい規制を考えていると受け取れる。

「進んでいると言われているのはカナダです。機体重量を25kgまでに規制しています。ただしアメリカと違って25kg以上のドローンに関して、あるいはドローンを目視外で飛行させることについても“検討中”。つまり現時点では、ダメだとは言っていません」

 教授によれば、カナダは広大な土地に広がるパイプラインの点検に、ドローンを活用したいという。目視外での飛行を禁止すれば、そうしたインフラ点検に使えなくなる。そこで“検討中”と曖昧にしているのだろう。

 商業利用を考えているアマゾンなどは、アメリカ企業でありながら、ドローンの研究開発をアメリカ国外で行っている。規制を厳しくしすぎると、産業として育つ芽を国外に流出させてしまうという見方もあるのだ。

◆車検制度のような運用ルールが望ましい

 では、日本ではどんな規制を敷くべきなのか? 先日発表されたドローン規制の政府案では、航続距離5km以上の高性能ドローンが対象。操作には国家資格「無線技士」の取得を義務づける方針を固めた。だが、首相官邸の屋上に落下したドローンは、航続距離5kmに満たないモデルだ。野波教授は次のように提案する。

「5kmという数字には根拠が希薄。GPSを使って自律飛行できるドローンに関しては、航続距離に関係なく登録制にすべきです。また、自動車の車検のような制度で、各ドローンの安全性の検証も必要です。さらに、所有者の登録。これは反社会的な組織や人に、高性能ドローンが渡らないようにするため。この3つで完璧です」

 とはいえ行き過ぎた規制は、ドローン産業の発展を狭めてしまう。例えば野波教授が開発したドローン「ミニサーベイヤー」が、福島原発建屋内の調査に使われている。また、農薬散布用としては約2700機が活用され、人手不足の国内農業を支えている。その他、警備、橋やビルのインフラ点検など、ドローンの利用範囲は急速に拡大するだろう。

 最後に、ロボット研究をしていた野波教授が、ドローンの研究を始めた理由を聞いた。

野波健蔵氏

野波健蔵氏

「やっぱり空を飛ぶドローンには、夢があるじゃないですか。ドローンは、無限の可能性を秘めていると確信しているんです」

 良い話ばかりではないが、正しく運用すれば、多くの人の役に立つはず。政府には、そうした明るい未来を阻まない、運用ルールとしての規制を考えてもらいたい。

【野波健蔵氏】
千葉大学の工学博士。ロボットなどの自律制御化などを研究した後、ドローンの研究を開始。自律制御システム研究所代表
<取材・文/河原塚英信>

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