2月26日にあった「二・二六事件」と日本を救った英雄
今日、2月26日といえば、「二・二六事件」を頭に思い浮かべる人は多いだろう。「しかし、事件の重大さに比べて、その実情を詳しく知る人は少いのでは?」――こう語るのは、『基礎教養 日本史の英雄』(倉山満+おかべたかし)の著者である、おかべたかしさん。確かに、「ゴーイチゴ」と並んで「ニーニーロク」という語感のよさから、なんとなく事件の概要はつかんでいるものの、「青年将校たち起こしたクーデター未遂事件」といった程度の知識でしかない。
「二・二六事件というのは、陸軍の派閥争いに負けた青年将校たちが、約1400人もの兵士を率いて首相官邸や警視庁を襲った事件です。1936年(昭和11年)の2月26日に起こったので、こう名付けられている――ここまでは、多くの人が知っていますが、このとき2人の総理経験者が殺されています。
この事件で殺害された、斉藤実と高橋是清は、総理経験者で暗殺された6人のうちの2人(ほかは伊藤博文、原敬、浜口雄幸、犬養毅)なのです」
また、のちに総理となる鈴木貫太郎も重傷を負い、このとき総理だった岡田啓介は、押し入れに隠れて生き延びるも、容貌が似ていた義弟が殺されている。
「襲撃した軍人たちは、義弟を岡田総理と勘違いしたのです。ただ、岡田総理が殺されたと考えたのは、内閣も同じでした。総理まで殺されたと知った政府の大臣や軍の高官は、もうどうすればいいのかわからない状況です。いわば無政府状態に陥ったのですが、ここで昭和天皇が『鎮圧せよ!』と素早く決断されたのです」
この昭和天皇が決断したことの重大さを、同じく『基礎教養 日本史の英雄』の著者である倉山満さんはこう語る。
「よく勘違いされているのですが、戦前の帝国憲法下の天皇ができるのは《警告権、激励権、被諮問権》だけ。つまり言論の自由があるだけで、統治権は行使してはいけません。しかし、政府が存在しないような緊急事態が起これば、統治権を発動するのです。政府機能が麻痺するような緊急事態にだけ登場し、そして元に戻っていく。それを期待されている存在が帝国憲法の天皇です。百年に一度でもあってはならないような危機に備える、その究極の安全保障機関とも言うべき存在が、天皇なのです」
そんな未曾有の状況、緊急事態が、ちょうど80年前の2月26日に起こったのだ。
「この無政府状態の緊急事態に、昭和天皇は統治権を発動し、この日からわずか4日でこの事態を収拾し、元の天皇に戻っているのです。このときの昭和天皇の決断を『ご聖断』といって、まさしく日本を亡国から救った英雄の所作だと言っていいでしょう」
「二・二六事件」を語る際に「英雄」がいたとする指摘はあまりなされてこなかったのではないだろうか。「英雄」をキーワードに日本史を語る『基礎教養 日本史の英雄』は、そんなことを教えてくれる一冊だ。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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