更新日:2022年11月20日 10:34
エンタメ

芸達者な若手を先物買いしたいなら、浅草でタップを踏む女子高校生集団を見よ!

 浅草といえば、今や世界的な観光スポットとして大賑わいだが、一方で昔から落語やお笑い、大衆演劇など数々の娯楽で多くの老若男女を集めてきた。そんな芸能の聖地に、制服にローファーという高校生のド定番アイテムを身にまとった若手女優たちが降臨! その名も「浅草少女歌劇団・ローファーズハイ!!」。歌い踊り、タップも踏みながら演じる舞台が話題を集めている。 ローファーズハイ! 「ローファーズハイ!!」は、新垣結衣や内田理央などを擁すレプロエンタテインメント所属の若手女優たちが出演する舞台。決まった台本はなく、“ローファーを履いた女子高生”という設定だけで、稽古場で即興で作り上げていく。この舞台は同社が今年3月に浅草にオープンした劇場「浅草九劇」で4月に初演を飾り、8月には第2弾と好評を博した。そして、この12月14日~24日には第3弾となる「ローファーズハイ!! Vol.3」の公演が開催されることになっている。  舞台に立てるのは9人。毎回入れ替わりながら、12月の公演では13人のメンバーで一つの公演を回す。今回の公演で新たに加わるメンバーの中には、新キャストオーディションを勝ち抜いた中学生もいるという。  前回、8月の公演を見る機会に恵まれたが、舞台を見るまではキャピキャピ(死語、失礼)した女子高生たちが出てきて、賑々しいだけのものなんじゃないかとタカをくくっていた。が、前言撤回、ごめんなさい!!!
ローファーズハイ!

前回8月公演より

 舞台が始まる前、前説をする女の子から達者なしゃべりで、劇場を笑いに包み込む。そして、幕が開くと、揃いのブレザーにチェック柄のスカートを履いた女のコたちが元気よく舞台に登場し、部活でタップダンスに励む女子高生たちの物語を演じていく。恋や友情がちりばめられたエピソードは面白おかしくて、どこか懐かしくて切ない。かと思うと、彼女たちは自分たちよりはるかに年上の大人の観客をいじり倒して会場を爆笑の渦に巻く。そして、最大の見せ場であるローファーによるタップシーンは圧巻。思わず前のめりになって見入るほど興奮し、本当に心を躍らせてくれた。  構成・演出には関西出身の若手劇団として注目を集める「劇団子供鉅人」の益山貴司、振付は蜷川幸雄の舞台などに参加してきた広崎うらんが務めている。だが、基本的には出演するメンバーたちのアイデアを重視して作られているという。本公演のプロデューサーを務める佐々木弘毅氏は「もともと自社の劇場というところで、若手タレントたちのお披露目の目的もあるんです。実際に動いている彼女たちの生の魅力を知って欲しいというところから始まっています。舞台の内容もセリフも彼女たちに考えさせているんです。だから、等身大の言葉が出てくる」と話す。
ローファーズハイ!

プロデューサーの佐々木弘毅氏

 実際、公演を見たTVや舞台のプロデューサーの目に留まることも。8月の公演に出演していたメンバーの一人である寺本莉緒は、東宝の舞台、「屋根の上のバイオリン弾き」への出演が決まったという。

新メンバーを交えての練習に密着!

ローファーズハイ! ちょうど12月の公演に向けて始まったワークショップの現場を取材した。候補生を含む20人前後が次回公演の物語についてのアイデアを出し合い、オーディションで選ばれた新メンバーの前で、先輩メンバーたちがタップダンスを披露。リズミカルで息もピッタリ揃っているが、「最初はリズムが難しくてそろえるのが大変だった」と言うのは、奥田こころさん(14歳)。 「タップって踏めば音が鳴るものだと思っていたら、全然、想像通りに鳴らない。ただ、すっちゃうだけでした」というのは百音さん(18歳)。同じく佐々木七海さん(17歳)も「タップって足だけに意識を集中させて上半身は動かさないんですけど、慣れないうちは足に集中すると、上半身はお客さんに見せられた状態じゃなくなってしまって大変でした」。また、大森つばささん(19歳)は「私はヒップホップをやってたんですけど、ヒップホップはかかとで立たなくてはいけない。それが難しかった」と明かす。  プロデューサーの佐々木氏はこう話す。 「タップがうまくできるようになるかならないかはもう練習の賜物でしかないんです。とにかく自主練でもやって自分で頑張るもの。だけど演技は違う。うちの場合、3年前から役者の養成のために、ワークショップをやっています。役者は、演出家の前でどれだけ自分の手数が見せられるか。それが重要だと思うんです。教えられることが当たり前だと思っている子たちに、自分の頭で考えさせることを大事にしているので、物語はゼロから一緒に作っていきます」  そんなワークショップを経験してきたメンバーも言う。 「舞台を観にいったときに、これを『ローファーズハイ!!』でやったら面白いかなとか、考えるようになりました」(大森さん)。 「自分で考える力がついたと思う」(奥田さん)。 「ワークショップを受けたおかげで、今まで自分を出すことが苦手だったけど、それを克服できました。周りのみんなも個性が湧き出てきて、『こんな人だったんだ!?』と思うことも多いです」(佐々木さん)。  さて、12月の公演では、過去2回とは違って、新たな物語を演じるという。 「また新しい自分を出して、みなさんに新しい『ローファーズハイ!!』を見せられたらと思います」(大森さん)。「一人一人の個性が強いけれど、みんなのいいとこ取りをしてパワーアップさせた舞台ができるようガンバリます」(百音さん)。  ネクストブレイクのスターの卵が次々と巣立っていく彼女たちの舞台、見ものである。<取材・文/前田かおり 撮影/林 紘輝>
●公演情報
浅草九劇12月公演『ローファーズハイ!! Vol.3』
12月14日(木)~24日(日)
詳細は、随時公式サイトにアップされる
https://asakusa-kokono.com/independent/loafershigh
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