「体操パワハラ問題」をわかりやすく解説。宮川選手と女帝とのバトルの行く末は?
18歳の少女の決意が日本体操界を揺さぶっている。8月29日、体操女子リオ五輪代表の宮川紗江選手が、13日付で日本体操協会から無期限登録抹消処分を受けた速見佑斗コーチのパワハラ疑惑について会見を開いた。協会は「宮川選手の頭を叩くなどの暴力行為を認めたため」と処分理由を説明していたが、宮川選手は「パワハラはなかった」と反論。さらに、“新たな加害者”の存在を明らかにした。「女帝」と呼ばれる協会の塚原千恵子女子強化本部長だ。
このように激しさを増す宮川選手と女帝のバトル。事態を複雑にしているのは、速見氏の暴力行為とされる件だ。実際、宮川選手も「1年以上前に叩かれたり、髪を引っ張られたことはあった」と認めている。速見氏も、一度は協会による登録抹消処分に対して地位保全の仮処分申し立てを行ったが、31日になって取り下げた。暴力行為を認め、処分を受け入れた格好だ。が、体操界には速見氏に同情的な声が少なくない。
内村航平選手の名物ママであり体操指導者の周子さんは次のように話す。
「佑斗は私と同じ長崎の出身で、小さな頃からの付き合いがあるんです。本当に優しい子。指導者としても悪い噂は聞いたことがありません。仮に、暴力があったとしても、指導の枠を超えたものではないと言い切れます。体操は命に関わる危険なスポーツです。だから、私のクラブでも気を抜いて練習している子には厳しく指導します。言っても聞かない子がいたら、練習を見学しているお母さんが、いきなりその子を思いっきりひっぱたくことも。それって愛情があるからでしょう?(苦笑)」
都内で体操クラブを経営する元体操選手の池谷幸雄氏もこう話す。
「僕の先輩にも練習中の事故で車イス生活を余儀なくされている人がいます。命に関わる競技だから、不真面目な練習態度に手が出てしまう気持ちはわかる。車が行き交う道路に飛び出そうとする子がいたら、押し倒してでも止めるのと一緒。特に体操は幼い頃から始める選手が大半なので、指導者にとっては本当の子供のような存在。だから、早く紗江のコーチとして復帰したい一心で、あえて仮処分申し立てを取り下げた速見コーチの気持ちは痛いほどわかる」
かいつまんで説明すると、’16年に導入された「2020年東京五輪特別強化選手」プログラムへの参加を見送った宮川選手に対して、千恵子氏は「申し込まないと協力できない」「五輪に出られなくなる」などと迫ったという。今年7月の代表合宿では千恵子氏の夫で協会副会長の光男氏同席のもと、「速見コーチに暴力の話が出ている。あなたが認めないと厳しい状況になる」と証言を強要されそうになったことも。さらに、速見氏への処分が決定していないにもかかわらず、千恵子氏の“付き人”から「朝日生命体操クラブにくればいい。寮も空いている」と勧誘されたというのだ。同クラブは光男氏が総代、千恵子氏が監督を務める有名クラブ。暴力問題を材料に速見氏と切り離して朝日生命体操クラブへの引き抜きを企てた、というのが宮川選手の見立てだった。
これに対して千恵子氏は「全部ウソ」と真っ向から反論。「五輪に出られなくなる」発言は、今年の宮川選手の成績が振るわないことを踏まえてのことだ、と弁解。ついには、隠し録りしていた宮川選手との音声データを8月31日の『報道ステーション』(テレ朝系)で公開しつつ、パワハラを完全否定したのだ。その前日には“潔白証明会見”を開こうとしていた節もある。体操関係者が話す。
「30日の18時からNTC(ナショナルトレーニングセンター)で、ある代表選手が緊急会見を開くという情報が流れました。ところが、協会の了解を得ずに開こうとしたため、怒りを買って直前になって中止に追い込まれたんです。その晩には、テレ朝スポーツコメンテーターの宮嶋泰子さんによる電話インタビューという体裁で、『報道ステーション』に千恵子さんが生出演。この流れからして、千恵子さんが選手を動員した潔白会見を開こうとしていたのだろう、と言われています」
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