堀ちえみ、舌がんからの生還「カラオケに行ったら奇跡が起きた」
15歳でアイドル歌手としてデビュー。翌年、テレビドラマ『スチュワーデス物語』で主人公・松本千秋を演じ、一躍お茶の間の人気者となった堀ちえみさん。以来、歌手だけでなく女優、タレントとしても幅広く活動し、プライベートでは7人の子どもを育てる母親として忙しい毎日を送っていた。
Stage For〜舌がん「ステージ4」から希望のステージへ』から探ってみよう。
堀さんが、舌の裏に異変を感じたのは2018年6月のこと。鏡で見ると白くポツンとしたできものがあった。
見慣れない症状が気になり、かかりつけの内科で診てもらったところ「口内炎ですね」。口内炎なら歯科に行ったほうが早いかもしれないと考え、口腔外科を看板に掲げ口内炎治療にも特化しているという歯科を受診。そこでも同じ診断で、すぐに痛みがやわらぐからとレーザー治療を施された。
しかし、痛みがやわらぐどころか増すばかり。それどころか、舌の裏だけでなく左の側面にも硬いしこりができてしまった。ただ、それまで口内炎の経験がなかった堀さんは、「こういうものなのかなあ」と思いながら痛みに耐えていたのだという。
堀さんは、口内炎について別の医師にも相談していた。
「私は3年ほど前からリウマチを患っています。リウマチは全身の激痛との闘いですが、幸い私に合う薬と出会えたおかげで、なんとか痛みを抑えることができていました。ただ、薬というものは、ある症状に効く反面、副作用が出ることもあります。リウマチ科の医師によれば、私が飲んでいる薬の副作用の一つに、口内炎があるのだそうです」
薬の副作用なのだから仕方がないと自分に言い聞かせていたが、激しい痛みが容赦なく堀さんを襲う。そこで、再び歯科医を訪ねて「悪性ではないか。精密検査を受ける必要はないか」と尋ねるも、医師は「検査の必要なない」と即答。リウマチ医はさすがに「症状がひどいので、薬を中止しよう」と言ったが、それでも口内炎は悪化する一方だった。
いよいよ痛みに耐えられなくなり、大学病院の口腔外科の門を叩いたのは2019年1月21日のこと。舌の異変に気づいてから、7か月を過ぎていた。
その日、医師の所見の段階で「悪性」と言われ、検査入院を経て下された診断名は「口腔がん(左舌扁平上皮がん)」だった。がんのステージは最も進行した状態の「ステージ4」。舌の状態はステージ3だが、リンパ節にも転移しているのでステージ4とのこと。そして、生存率は50%と宣告される。
一時は「もう悔いはなし!」と、手術を受けない方向で人生の幕引きも考えたという。しかし、「生きてほしい」と号泣する末娘に心を動かされ、「家族のために生きよう」と決意。舌の6割以上とリンパ節を切除。太ももの組織を移植して舌を再建する手術を受けた。
術後は嚥下(食べ物を飲み込むこと)もままならず、新しい舌と格闘しながら発声・発話の訓練に励んだ。
つらいリハビリを乗り越えて、ようやく出口が見えたかと思った矢先、4月に食道がん発覚。そのショックは、舌がんを宣告された時よりも大きかったそうだ。しかし、早期に発見できたおかげで、食道がんは手術ですべて取り除かれ、病理検査の結果も「ステージ0」。
これでもか、これでもかと病が降りかかりながらも、へこたれずに立ち直ってこられたのはなぜなのか。その理由を、堀さんは次のように綴っている。
「自分の運命をどこかで信じているからなのかもしれません。こんなに病気をして、こんなに苦しめられても、自分の体が愛おしいから乗り越えてこられたのでしょう」
そして何よりも、愛する家族や医師、ファンやブログ読者からの励ましがあったからこそ。
思いがけない人たちからの応援も、心の大きな支えとなった。『スチュワーデス物語』でお世話になった日本航空からも、寄せ書きと7000羽の千羽鶴が届いたそうだ。
そんな堀さんが、「舌がん」を宣告されたのは2019年1月末のこと。すでに「ステージ4」と深刻な状況だったものの、果敢に病に立ち向かい、見事生還。現在のところ再発も転移も見られず、リハビリに励んでいる。堀さんは今、何を思うのか。復帰第一弾として上梓した著書『「口内炎」だと信じ込んでいた
家族、友人たち、ファンの方々の支えがあってこそ
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『Stage For~ 舌がん「ステージ4」から希望のステージへ』 堀 ちえみが本書で初めて明かす、苦しみ、葛藤、そして……がんが教えてくれたこと |
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