ドラッグで“キマる”ってどんな状態? バッドトリップの大家が解説
ドラッグ事情に詳しい作家の石丸元章氏は前回の記事で「仕事面に関してドラッグが与える影響」について解説してくれた。だが、そもそもドラッグが実際にキマると人間はどうなってしまうのか? 多幸感や酩酊感、万能感を感じると一般的に言われているが、やったことがない者にとっては完全に未知の領域。これについて「一番わかりやすいのは“シャブSEX”でしょう」と石丸氏は語り始めた。
【過去記事】⇒沢尻エリカ、ピエール瀧…違法薬物でクリエイティブ性はあがる? ドラッグ体験者の作家・石丸元章に聞く
「覚醒剤とSEXの組み合わせは中毒性が尋常じゃない。ただし、その実態は哀れなものです。当人同士は倒錯した快感に溺れて『イクイクイク~!!』と天国に昇る気分で絶叫しているけど、はたから見たら地獄絵図。ためしにXVIDEOSで『meth sex』と検索してみてください。methとは覚醒剤。あれを観てうらやましいと感じる人はいないでしょう。むしろ気の毒に思えるんじゃないかな。
一般人が考える“ダメな麻薬中毒者”そのものですから。フェティッシュで、タトゥーが入っていて、だらしない身体をしていたり痩せこけていたり…。覚醒剤の影響で勃起もしないのに、渦中の本人たちだけは最高だと思っている」
意外なことに、覚醒剤の最大の抑止力になる存在はXVIDEOSなのかもしれない。ただし石丸氏は「シャブSEXを経験した者は『惨め』じゃなくて『もう一度…』と感じる可能性もあるから危険」と付け加えることも忘れなかった。
「そういえば中学生になる息子から尋ねられたこともありますね。『パパ、覚醒剤をやるとどんな気分になるの?』って。そのとき、僕はある俳句を詠んだんです。それは『鼓動一ツ 忽ち(たちまち)蝉の 黙り込む』というもの」
作品が生まれた背景はこうだ。ある暑い夏の日、庭に生えていた巨木に蝉が大量に止まって鳴いていた。一方、石丸氏は家にあった覚醒剤に手を伸ばす。一吸いすると、心臓が“ドクン!”と鳴って止まった。次の瞬間、すごい勢いで鳴いていた蝉の声が一斉に消えた。宇宙の静寂が自分に訪れた──。
「それを聞いた息子は『何それ! 僕もやってみたい!』って目を輝かせていましたけどね(笑)。最近の中学校では麻薬について啓蒙活動を行っているんです。麻薬がいかにダメで、辞められなくて、やると気がおかしくなるか……みたいなことを。僕からするとその教えの中には違うんじゃないかと思うところもあるんだけど、中学生に対してはそれが正解だと痛感した。僕の俳句じゃ『俺も!』『私も!』ってなりかねないですから」
それにしても逮捕されるリスクがあるのに、なぜドラッグに手を出すのかという疑問は消えない。「代わりに酒じゃダメなのか?」とも思うが、石丸氏によるとそれは愚問なのだという。酒に酔う感覚はドラッグとは別物。「ラーメンを食べたい人が、代わりにカレーで満足できるのか?」という話だろう。そんな中、石丸氏はドラッグの“代用物”が存在することを発見したそうだ。
「ズバリ、サウナです。あれは最高ですよ。最近はサウナがブームになっていて、好きな人は“ととのう”という言葉を使いますよね。ととのうという感覚こそ、ドラッグでキマった状態に近い。通常、サウナは水風呂とセット。その温度差によって自律神経を強引に上下させるものですよね。結局、やっていることはドラッグと同じなんです」
サウナを好きになると習慣化する人が多いが、仕事に穴を空けてでも足を運ぶような依存性はない。もちろん身体にもいい。ドラッグをキメて人生を棒に振るくらいなら、まずはサウナに行け──。ドラッグを辞めてから熱心なサウナーになったという石丸氏は熱く提唱するのだった。<取材・文/小野田 衛>出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
息子に尋ねられて一句
サウナの“ととのう”が“キマる”
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ