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「膝の痛み」を軽視してはいけない理由。“歩けなくなる重病”の予備軍が、50代の2人に1人とも

 最近膝が痛むと感じる人は要注意!加齢のせいだと放置したら、生活の質を著しく下げてしまう恐れも──。50代の2人に1人が予備軍といわれる国民病、「変形性膝関節症」重症化の恐怖を専門家が解説する。

痛みが出たらすでに重症!?軟骨がすり減る「恐怖の病」

[膝の痛み]を軽視してはいけない危険な理由

5年前まではトライアスロンにも毎年参加していたという仲村さん。「膝が痛いせいで旅行も仕事も満足にできない!」。若くして生活が制限され意気消沈する

「ごめん、旅行には行けない。お父さん膝が痛くて歩けないんだよ」  会社員の仲村雄一さん(51歳)は、高校生の娘からの旅行の誘いに、そう返すしかなかった。まだまだ働き盛りの50代。「まさか自分がこんなに不自由になるなんて」と、うなだれる。  1年前、散歩をすると膝が痛くなり、病院に行くと「変形性膝関節症」と診断された。症状の悪化を避けるため、今では歩数制限が課せられ、原則走ることも禁止だ。  痛風や運動による故障など、膝を痛める原因は多々あるが、仲村さんが患った変形性膝関節症は他人事ではない。
[膝の痛み]を軽視してはいけない危険な理由

東京女子医科大学整形外科・岡崎 賢氏

 東京女子医科大学整形外科の岡崎賢教授は、「50代でも2割、60代以上では半数が変形性膝関節症。もはや国民病とも呼べる疾患」だと警鐘を鳴らす。
「変形性膝関節症は膝の軟骨がすり減って炎症が起こり、膝が痛くなる疾患。ですが、膝軟骨には神経が通ってないため初期の段階では痛みは軽いも、気づいたときにはすでに軟骨のほとんどがすり減り重症化しているケースもあります」  変形性膝関節症の恐ろしいところは、現代医療をもってしてもすり減った軟骨が戻ることはないという点だ。 「症状が進行し、軟骨がなくなると痛みを軽減するには人工関節以外に手立てがないというケースも多く見てきました。変形性膝関節症は通常10年単位で進行しますが、中には急激に症状が進み、痛みを自覚してから2〜3年で歩けなくなる人も。少しでも違和感があれば、MRI検査をしましょう」

将来高い確率で重症化する人も

[膝の痛み]を軽視してはいけない危険な理由

まつだ整形外科クリニック・松田芳和氏

 また、まつだ整形外科クリニックの松田芳和医師は、次のように訴える。 「重症化すると膝の痛みで旅行にも行けないし、スポーツなんてもってのほか。仕事に支障が出れば、生活にも直結します。中年世代の中には生涯運動を続けたいと考えている人も多い。変形性膝関節症がそうした将来設計に影響を及ぼすことになるのです。実際、要支援者となる原因の1位は関節疾患。その中でも膝の痛みがダントツです」  また、高知大学医学部整形外科の池内昌彦教授は、「年を重ねたら膝が痛いのは当然、という認識の人も多く、膝痛はほかの痛みと比べて軽視されがち」と指摘する。 「膝の痛みが心血管障害や糖尿病、さらには認知症などに繋がるという研究結果も出ており侮れません。過度な運動は膝の症状を悪化させますが、膝軟骨の摩擦を軽減する潤滑油は関節を動かさないと分泌されないため、適度な運動も大切。仕事が忙しくて運動不足なんて人は要注意です。ただし、膝を痛めやすい骨格の人もいれば、肥満、外傷歴などその因子は多種多様。高確率で将来重症化する因子を持っている人もいます」  すなわち、現時点で健康的な生活を送りアクティブに過ごしていても、すでに変形性膝関節症となる“爆弾”を抱えている人が一定数存在するのだ。少しでも違和感を覚えたら病院に行くことが大切だ。
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高額出費は免れない?変形性膝関節症の治療とは
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