アフターコロナで辞めた新入社員。リアル出社で会社の何に気づいた?
これまで多くの企業ではテレワークが中心だった。緊急事態宣言が解除され、ついに「普通の生活」に向けて社会が動き始めているが、普通の生活と言っても、本年度から新社会人になった人たちにとっては、それは「未経験」のもの。むしろコロナ禍におけるテレワーク生活が、彼らにとっては「普通の生活」だったのだ。
6月に入ってからリアル出社をするようになり、ギャップを感じたという声も少なくない。なかには、すでに辞表を提出した新入社員も……。
「6月に入って、新入社員が各部署に配属されました。2か月間、リモート方式による研修をみっちり受けた新人の中にはリアル出社から数日で、人事に辞表を出しに行ったヤツもいるんです」
こう話すのは、東京都内の大手IT企業子会社勤務の丸橋洋平さん(仮名・40代)。今年の新入社員は、入社式も入社後の研修も全てリモート方式で行われたというが、やはり慣れない環境が新人のやる気を削いだのか。
「辞表を出した新人は女性で、実は入社式でも新入社員を代表して挨拶をしたような優秀な人だったんです。研修中の評価は抜群で、各部は人事に『うちに寄こせ』と取り合いをしていたほど。6月からは幹部候補生の期待を背負って、最重要の営業部に配属されたんですが、1週間もせずこの有様。営業部の教育担当は青ざめていました」(丸橋さん、以下同)
丸橋さんによれば、有望な女性社員が出社後、最初に命じられたのは上司のデスク周りの清掃だった。それも、出社の30分以上前に出社しなければできないという、時代の流れに逆行した“完全時間外サービス早出”である。
他の先輩社員たちも当たり前にこなしてきた社の「掟」だったが、新人には通用しなかった。
「研修中に提出した課題論文もほぼ満点、人当たりもよかった。彼女は人事部に『会社に失望した』と言っているようです。甘ったれるな、と思う気持ちもありますが、我々の方が取り残されているのだろうか……」
コロナ禍以降、あらゆる価値観は確かに変わった。より効率的な働き方になったと言える。だが、アフターコロナを迎えて普通の生活に戻ってみれば、悪しき習慣のようなものまで元通りになりつつもあるのだ。
新社会人たちは、我々のようなオッサン世代が抱く「社会の常識」をせせら笑っているかのよう……。辛辣な指摘を突きつけるのは、東京都内のコンサルティング企業の新入社員、大隈悠人さん(仮名・22歳)だ。
「テレワークに慣れてしまい、6月に出社してから会社への違和感を強く感じました。今までは全てアプリでやりとりをしていたのに、出社してからは資料は紙で提出しろ、朝礼だの終礼だの面倒くさ過ぎます。会議だって、ただ会議室に集まって上役の話を黙って聞いているだけ。賛成です、といって解散。こんなこと、パソコンとネットがあればどこでもできる。ものすごい無駄だと誰も思わないんでしょうか?」(大熊さん、以下同)
大隈さん自身、これまであまりパソコンを使いこなしてこなかったと認める。しかし物心ついた頃にはインターネットがあり、必要な情報は全てスマホで手に入れた。ネットネイティブ世代らしさがうかがえるが、必要とあらばパソコンだって覚えたし、人とのコミュニケーションもネットで、それこそリアルで会う以上にスムーズにできる自信がある。実際にそうやってきたのだ。
リモート中には気づかなかった“完全時間外出社”
実際に上司と会ってみたら頑固ジジイだった
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