食べ放題、飲み放題で元を取るのは可能か
デフレで物がどんどん安くなるなか、気になるのは企業が儲かっているのかどうか。実際、多くの企業が業績悪化で苦しんでいるものの、激安商品をウリにした企業には業績好調なところも。そこで今回は激安衣料や飲食店の食べ&飲み放題、さらに神頼みグッズまで、さまざまな商品の原価を調べ、儲かるカラクリに迫った!
【食】
食べ放題、飲み放題で元を取るのはほぼ不可能
◆居酒屋の飲み放題
定価 1000円
生ビールの原価 158円
酒好きにとってはありがたい「飲み放題」サービスの原価はどうなっているのだろうか?「1000円で2時間飲み放題」を提供している大手居酒屋チェーンの店長はこう説明してくれた。「飲み放題メニューの中で一番原価が高いのは生ビールで、中ジョッキで158円程度。そのほか、日本酒やワインも150円くらいで高めですね。一方、酎ハイやカクテルは平均40~50円ぐらい。特に安いのはウーロンハイで、1杯20円もしません。逆にちょっと高いのはカルピス酎ハイですかね」
では、みんながビールばかりを飲んだらお店としては迷惑……と思いきや、経営に影響するほどではないようだ。「居酒屋ではビールは広告のようなもの。ビールを安くしてお客さんを呼び、ほかのお酒や料理を注文してもらって利益を出すというのが儲けのカラクリです。だからビールで赤字が出ることはある程度折り込み済み。また、日本酒やワインに関しては、好きな人は飲み放題に含まれていない銘柄を好むので、ほとんど影響がない。最近の若い人はビールは最初の1杯程度で、あとは酎ハイという人が多い。飲み放題での酎ハイは儲けの源泉ですから、彼らは本当においしいお客さんです(笑)」
◆焼き肉食べ放題
定価 2000円
原価 700円
「元を取るぞ!」と意気込んで行く焼き肉の食べ放題。しかし、元を取るのは現実的に不可能だと教えてくれたのは、大手焼き肉チェーンの店員。
「ウチの店の2000円の食べ放題コースでは、一人の原価は約700円前後で計算しています。肉はそれほど安くありませんが、ほとんどの人はライスやデザートも注文してくれる。ライスなんて大盛りでも原価は30円ですから、これでお腹を満たしてもらえれば平均700円前後になりますね」
そもそも焼き肉店は客が自ら肉を焼くので人件費が安く抑えられる。そのため、一般的な飲食店の原価率が30%前後なのに対し、原価率40%まで許容でき、食べ放題が可能になるのだ。肉そのものの原価は1人前(100g)500円で提供するカルビの原価がおよそ150円。タンやロースに至っては100円程度だという。
「どの店でも生産者と直接契約を結ぶなど、仕入れ価格を抑える工夫をしています。ただ、食材管理や肉の切り分けでロスを出したら元も子もないので、肉を切り分ける作業はバイトに任せられず、社員は休日返上になってます」
少しでも元を取りたい場合は?
「肉は古くなってもタレに漬け込めばごまかせますが、野菜は傷みが早くてロスが出るので原価率が高くなります。だから焼き肉食べ放題の店は野菜を食べられると嫌がりますよ。特にシイタケのような傷みが早いものは原価が高くなりますね」(金子氏)
とはいえ、焼き肉食べ放題で野菜を食べるってのは本末転倒のような……。
◆ケーキ食べ放題
1400円
原価 1コ60円
女性に人気のケーキ食べ放題。これも焼き肉同様、元を取るのは難しい。
「ケーキの原価率はせいぜい1コ20%程度。フルーツが載っているものは多少原価が高めですね。あとは、薄い色から濃い色という順番で食べたほうがいいですよ。チョコなどの濃い色のケーキは味が濃くて、最初に食べるとお腹がいっぱいになりますから(笑)。行列ができるドーナツ店のドーナツなんかも1コ20円程度ですから並ぶだけ損ですよ」(金子氏)
●原価を知り尽くす達人●
【坂口孝則氏】
調達業務研究家 メーカーの調達部門を経て独立。現在、調達購売マネジメント取締役。近著に『激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ』(徳間書店)
【金子哲雄氏】
流通ジャーナリスト兼プライスアナリスト。モットーは「清く貧しくゴージャスに」。など著書多数
― 知って得する[原価のカラクリ]大調査【4】 ―
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