2着目半額スーツで儲けが出るカラクリ
デフレで物がどんどん安くなるなか、気になるのは企業が儲かっているのかどうか。実際、多くの企業が業績悪化で苦しんでいるものの、激安商品をウリにした企業には業績好調なところも。そこで今回は激安衣料や飲食店の食べ&飲み放題、さらに神頼みグッズまで、さまざまな商品の原価を調べ、儲かるカラクリに迫った!
【衣】
ジーンズはまだ安くなる。500円でも利益は出る!
◆激安ジーンズ
定価 880円前後
原価 554円
ユニクロのファーストリテイリングが口火を切り、イオン、西友、ドン・キホーテも参入した1本1000円以下の激安ジーンズが大人気。しかも、調査で訪れたイオンでは、年度末のため880円のジーンズが2割引きの704円で販売されていた。はたしてこれで利益は出ているのか? 流通ジャーナリストの金子哲雄氏によると、
「一般的にプライベートブランドの商品の粗利益率は35~37%と言われています。私が調べたところ、イオンなど大手総合スーパーで販売される880円ジーンズの原価は554円で、そのうち半分は生地代。残り326円が粗利益で、そこから人件費や国内の輸送コストなどが引かれても十分に利益が出る計算になります」
とのこと。さらに、『牛丼一杯の儲けは9円』などの著書もある現役バイヤーの坂口孝則氏によると、
「知り合いのバイヤーが中国で見積もりを取ったら、100本単位なら1本300円という価格が出てきたそうです。1000本、1万本単位なら250円まで下げることも可能でしょう。物流コストを勘案しても1・2倍程度で輸入できるそうだから、原価が1本300円で、利益を乗せて500円台のジーンズが出ても驚きません」
という。ただし、「名誉のために言っておくと、ファーストリテイリングやイオンの商品は品質がいい」(坂口氏)そうなので、今より安いジーンズが登場した際は品質を要チェックだ。
◆2着目半額スーツ
定価 2万9800円
原価 約3600円
最近、大手の紳士服チェーンが都心での出店攻勢を続けている。そんな紳士服店で行われている「2着目半額」など、2着買うと価格が安くなるセールは儲かっているのだろうか?
「紳士服の場合、仕入れ原価は12~13%程度で、2万9800円のスーツだと3600円程度。そこに約1万430円の人件費、1万2665円の家賃・光熱費・宣伝費が加わると1着の利益は3105円程度と推定できます。特に高いのは人件費で、紳士服売り場では接客から採寸、会計まで顧客にべったりついておく必要があり、効率が悪い。でも、逆に考えれば、同時に2着買ってもらえれば、この人件費や家賃、宣伝費などに追加コストが発生しません。つまり、2着目を半額の1万4900円で販売しても、原価3600円を引いた1万1300円がそのまま利益になるのです。1着だけなら利益は3105円ですが、2着売ることで店側の利益は1万4405円に跳ね上がるのです」(金子氏)
なるほど、「2着目半額」にこんなカラクリがあったとは!
「だから、私は最低でも1週間分=5着をまとめ買いすることをおすすめします。そうすることでもっと値切ることが可能になりますよ!」(同)
スーツを同時に何着も買うことで、客も店も「得」を分け合えるのだ。
●原価を知り尽くす達人●
【坂口孝則氏】
調達業務研究家 メーカーの調達部門を経て独立。現在、調達購売マネジメント取締役。近著に『激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ』(徳間書店)
【金子哲雄氏】
流通ジャーナリスト兼プライスアナリスト。モットーは「清く貧しくゴージャスに」。など著書多数
― 知って得する[原価のカラクリ]大調査【1】 ―
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