「新品の靴が痛い!」まず試したい“靴のストレッチ”術。痛みをこらえるのは逆効果
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
どんな機能性のいい靴でも足にフィットしなければ持ち味が出せません。今から30年ほど前、筆者が高校生のころに、お小遣いを半年分貯めて満を持して初めて買ったナイキの「エアマックス」は、今でもトラウマです。
まず、幅が合わない。そのうえ、かかとから脱げて靴ずれを起こす。履き心地が猛烈に悪い。ショックで茫然自失となりました。今から考えると「カカト周り」がガバガバでまったくフィットしておらず、靴紐もしばりっぱなしだったので靴の良さを1%も発揮できていなかったのでしょう。さすがに今のナイキやアディダスなどの海外メーカーは、「カカトは小さくあるべきこと」の重要性をよく知っているので昔のような悲劇は起きにくいです。
シューフィッターとしての経験上、実は日本人に多いとされる「甲高・幅広」は意外に少なかったりします。都会でよく歩くという方でも、加齢や姿勢の悪さなどのツケがたまって、足の裏のアーチが「べちゃっ」と落ちていて、その結果、甲が低くなっている方が多いです。
その場合、紐靴はしっかり締め直すこと、スリッポンであれば、裏に「タンパッド」取りつけることで、劇的に改善します。それでも合わない、という方は靴を手で曲げてみましょう。これが靴のストレッチです。
店頭で売られている靴は、当然ですが見た目が第一なので、しわが入っていません。メーカーも出荷するまでは「型崩れをいかに防ぐか」が勝負なので、ドライヤーのような熱風をかけてしわを取ったり、靴用のアイロンをかけたりします。買って履き始めに、それがあだになるケースがあります。
ほとんどの「歩くための靴」は、構造上、足と同じところで曲がるように本来はできています。やや荒っぽいやり方ですが、足の指の曲がるところでじっくり数回に分けて曲げてあげると、とたんに革靴・パンプス・スニーカーは履きやすくなります。店内の新品で行うのはご法度ですが、買ってしまったけど返品もできず困っているという方は、靴を曲げてみましょう。
靴を壊しそう、変なしわが入りそうで怖い、という方には「キャッチャー座り」がおすすめ。相撲の蹲踞(そんきょ)といったほうがわかりやすいでしょうか。
靴を履いたままキャッチャー座りをすると、必然的に「曲がるべきところ」で曲がります。反動をつけずに数回にわけてゆっくり構えると、新品の靴でも2週間くらい履き込んだ状態と同じになります。
体が硬くてキャッチャー座りができないという方は、「靴を履いたまま背伸び」でもOK。伸びて着地する動作によって、同様の効果が得られます。パンプスやご婦人のおしゃれブーツなど、底の薄いものならこれでも十分に効果はありますし、はじめから靴がフィットしていると靴自体にも変なストレスがかからないので、逆に長持ちします。
ナイキ「エアマックス」の悲しき思い出
靴はストレッチで生き返る
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こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ 足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」
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