更新日:2015年11月09日 22:07
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リニア中央新幹線に横たわる「放射線汚染土」問題

リニア中央新幹線 昨年、第一期工事となる品川から名古屋までの、幅3kmという大雑把なルートが公表されたJR東海のリニア中央新幹線(来年、幅数十mの具体的ルートを公表予定)。東京都、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、岐阜県、愛知県をほぼ直線で結ぶのだが、岐阜県では、他の都県にはない特殊な問題が起こるかもしれない。 「リニアが通過する東濃地区には日本最大のウラン鉱床があるんです。そんなところに地下トンネルを掘ったら、膨大なウラン残土が排出される、つまり放射能汚染された土が出てくるかもしれません」  こう話すのは「中津川の環境を守る会」の野田契子代表だ。  東濃地区は、日本のウラン埋蔵量の6割が集中している地域。リニアは品川から名古屋までの8割を地下か山岳トンネルで通過する。東濃地区も地下トンネルの予定だ。そして、リニアはその高速性ゆえ、真っすぐか最小曲半径8kmという大カーブでしか曲がれない。つまり、トンネル工事でウラン鉱床が出てきたとしても回避できないのである。  今年2月、古田肇岐阜県知事はリニア計画に関してJR東海に意見書を送った。自然環境や騒音など33項目についての厳しい対処を求めたが、その冒頭で訴えたのが「ウラン鉱床の回避」だ。  そもそもトンネル工事でウラン鉱床にぶつかると何が起きるのだろうか? 保健衛生などの研究機関、国立保健医療科学院の山口研究官はこう説明する。 「ウラン鉱床には、放射性物質の一つであるラジウムが崩壊した気体のラドンガスが存在します。海外のウラン鉱山労働者の疫学調査では、これで内部被曝し肺ガンのリスクを高めることが判っています。鉱床でのラドン濃度は、高ければ、1立方メートルあたり4000~4万ベクレルで存在します」  岡山県と鳥取県にまたがる人形峠では、’57年から原子燃料公社(現在の「日本原子力研究開発機構」)によるウラン採掘が行われたが、野積みされたウラン残土の風下に位置していた鳥取県の方面地区では、鉱山閉山後の’66~’94年の間に、人口約100人のうち11人がガンで死亡。うち6人が肺ガンであった。この調査に携わった京都大学原子炉実験所の小出裕章氏はこう語る。 「ラドンの濃度は通常の空気には、1立方メートルあたり10ベクレル程度。法令では、鉱山の坑道などでは3000ベクレル以下、一般居住区域に流す場合には20ベクレル以下にするよう定めていますが、人形峠の坑口でのラドン濃度は10万ベクレルに達したことがあります。気体のラドンは風に乗って方面にまで流れたのです。ウランの半減期は45億年。ひとたびウランを掘り出すと、その残土は半永久にラドンガスを放出し続けるのです」  そして採掘から半世紀以上経った現在でも、人形峠のあちこちで述べ49万立方メートルものウラン残土が、野積みされたまま今も放射線を放っているのである。  全ルートにウラン鉱床があるわけではなく、また、ウラン鉱床を回避できる可能性も否定できない。しかし、リニアのトンネル工事で、岐阜県では約300万立方メートル、人形峠で野積みされているウラン残土の約6倍もの残土が予想されているのだ……。 『週刊SPA!』7/17発売号「リニア中央新幹線が日本を壊す!」では、水源地破壊の問題や電磁波、さらにはそもそも経済性がクリアされているのか? など山積みされた問題点について解説している <取材・文・撮影/樫田秀樹>
週刊SPA!7/24・31合併号(7/17発売)

表紙の人/向井理

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