[豪ドル]でミドルリスク・ミドルリターンを狙え
ECBをはじめ各国が金融緩和策を発表し、一時よりも欧州信用不安が後退してきているとはいえ、いまだ不安を払しょくするほど効果を発揮する手立てがないのが現状。そんななか豪ドルをはじめとした資源国通貨の一角が堅調に推移中。その理由を分析してみた!
⇒【前編】はコチラ「中国の経済指標と欧州向けの輸出比率がカギ」
◆過剰に相場は反応せず。欧州信用不安に慣れた!?
6月に、スペインの信用不安で相場が大きく下げたことは記憶に新しい。そこで、将来の投資家心理を示す数値として利用され、一般的に指数の数値が高いほど投資家が相場の先行きに不透明感を持っているとされるVIX指数と、豪ドル/円の値動きを比べてみた。
「今年は3月と6月に相場が大きく下げましたが、そのときのVIX指数は約26。VIX指数は、20を超えてくると投資家が悲観的になっている目安になるとされているのですが、6月以降はユーロが下げてもVIX指数は20ぐらいまでしか上昇していない。つまりユーロが下げても、投資家はそこまで悲観していないのです」(アナリストの小川佳紀氏)
ちなみに’08年のリーマン・ショックのとき、VIX指数は80を超える水準まで上昇したが、欧州信用不安が長引くことで、投資家もユーロ問題に過剰に反応しなくなってきているのかもしれない。
では、このまま豪ドルなどの資源国通貨は上昇するのだろうか?
「同じ資源国通貨でも、南アフリカランドはほとんど動かない。資源国通貨なら何でも上昇しているわけではありません。金が動いてもランドは動かない」(国際金融ジャーナリストの斎藤登美夫氏)
「結局、今の相場でハイリスク・ハイリターンはムリだが、ミドルリスク・ミドルリターンを狙いたい層が、豪ドルなどの資源国通貨を買っているだけという側面もあります」(小川氏)
豪ドルのリスクは何なのか?
「長期で見れば資源国通貨は強いと思いますが、短期では下げの余地も十分ある。中国の景気はもちろん、最近はオリンピック期間中だったこともあり、相場は比較的穏やかでした。10月にはスペイン債の大量償還が控えており、堅調な豪ドルも、ユーロが大きく下げればポジション解消の動きが強まり下げるでしょう。ドイツの発言には注意が必要です」(斎藤氏)
「豪ドル/円の長期のチャートを見てみると、直近の3年間はレンジ相場だということがわかります。今の豪ドル/円は、レンジの上値を目指す動きではありますが、レンジの上値が87円前後、下値が75円前後なので、ちょうど中間地点に位置しています。下値の余地も十分あることを認識しておかなくてはいけません」(小川氏)
下げだしたらポジション解消を念頭に、豪ドル上昇に乗ってみてはどうだろう?
【小川佳紀氏】
フィスコ株式リサーチ部アナリスト。中堅証券会社を経て現職。中小型株・新興市場株や為替の分析など幅広く担当する若手のホープ
【斎藤登美夫氏】
国際金融ジャーナリスト。約13年間の為替専門誌記者生活を経た後、独立。FXニュースレター社を設立し、代表を務める
取材・文/宏志(本誌) 図版/ミューズグラフィック
※図・表 出所:大和証券、豪州統計局
― 資源国通貨に資金流入[豪ドルがアツい!]これだけの理由【2】 ―
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