更新日:2012年08月27日 09:02
お金

資源国通貨[豪ドル]がアツい!

ECBをはじめ各国が金融緩和策を発表し、一時よりも欧州信用不安が後退してきているとはいえ、いまだ不安を払しょくするほど効果を発揮する手立てがないのが現状。そんななか豪ドルをはじめとした資源国通貨の一角が堅調に推移中。その理由を分析してみた! ◆もうユーロに連れ安しない!? 豪ドルに上昇機運が高まる!
7月の対円パフォーマンス

【7月の対円パフォーマンス】主要通貨のなかで、7月の1か月間で買われたのは豪ドルとカナダドルのみ。レアル、ユーロ、ランドなどは大きく売られた

 ギリシャ・ショックから間もなく2年たつが、欧州信用不安はズルズルと長期化の様相を呈している。その一方で最近、ユーロ安に連れ安していた一部の資源国通貨に上昇の兆しが見られ、ユーロが下げても堅調に推移している。 「7月の対円パフォーマンスを見てみると、豪ドルとカナダドルのみが円安で、ほかの通貨は円高になっていたことからも豪ドルの堅調さが窺えます」とは、アナリストの小川佳紀氏。6月にユーロが大きく下落した際は、資源国通貨も大きく値を落としたが、他の通貨に比べて戻りが早い。 ※【7月の対円パフォーマンス】はこちら
⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=276719
 なぜ資源国通貨、特に豪ドルが堅調なのだろうか? ◆中国の経済指標と欧州向けの輸出比率がカギ
オーストラリアの国別輸出額

【豪州の対中輸出は右肩上がり】堅調に推移するオーストラリアの中国向け輸出は、'08年あたりから徐々に増加。ギリシャ・ショックなどで一時、大きく落ち込んだものの、再び上昇モードに転じている

「ここ最近、原油などの商品相場が堅調なこともありますが、資源国通貨は、その資源を買ってくれる国の経済事情に左右されます。そのため豪ドルは中国の景気に敏感に反応する。ここ最近発表された中国の経済指標が、それほど悪くなかったことも豪ドルが堅調な理由でしょう」とは、国際金融ジャーナリストの斎藤登美夫氏。鈍化しているとはいえ、国連の報告では中国の経済成長率は今年度も8%程度が見込まれている(東アジアの平均は6.5%)。  中国の経済指標改善と商品相場の上昇傾向が強まれば、さらに豪ドルにとっては追い風になろう。 「’05年以降のオーストラリアの国別輸出額を見てみると、中国向けの輸出額が約8倍に伸びていることがわかります。リーマン・ショックやギリシャ・ショックなどの影響で、一時的に輸出額が減ることはありましたが、オーストラリアの対中輸出は、依然として右肩上がりで堅調さを維持しているのです」(小川氏) ※【オーストラリアの国別輸出額】はこちら
⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=276724
 しかし、欧州信用不安が後退しつつあるとはいえ、欧州経済の弱さは気になるところだ。
欧州向け輸出費率

【欧州向け輸出費率】主要国のなかで、欧州向けの輸出比率がもっとも低いのはメキシコ。日本も低いことがわかる。欧州に近い国の輸出比率はやはり高い

「豪ドルやカナダドルが堅調な理由は、貿易面からも見てとれます。例えば、資源国通貨と呼ばれるものは、一次産品の輸出比率が高いのが特徴。オーストラリアやニュージーランド、ロシアなどは一次産品の輸出比率が、輸出全体の70%を占めています。こうした輸出に関するデータを、欧州向けの輸出比率が低い順で並べてみると、オーストラリアは7.9%、カナダは8.6%、ニュージーランドは10.9%、ロシアは52.2%となります。要するに、欧州向けの輸出比率が低い国は(通貨は)、直接的に欧州低迷の影響を受けづらい状況にあると言えるのです」(同) ※【欧州向け輸出比率】はこちら
⇒https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=276725
 各国の経済動向を抜きにして、単純に貿易構造だけを考えれば、欧州向けの輸出比率が低く、輸出に占める一次産品の比率が高い国の通貨は、欧州経済の低迷が続くなかでも、相対的に高いパフォーマンスが期待できるだろう。ちなみに、ニュージーランドドルは資源国通貨なのかどうか、議論が分かれるところだが……。 「資源国通貨とは、その名のとおり資源を豊富に保有している国の通貨のことで、メジャーな通貨では豪ドルやカナダドル、ブラジルレアル、南アフリカランドなどが該当します。ニュージーランドドルも資源国通貨として扱われたりしますが、実際は乳製品や肉類の輸出が多い。ただし、最大の輸出相手国が隣のオーストラリアということもあり、豪ドルに連動します」(斎藤氏) 【後編】に続く⇒https://nikkan-spa.jp/276717 [豪ドル]でミドルリスク・ミドルリターンを狙え 【小川佳紀氏】 フィスコ株式リサーチ部アナリスト。中堅証券会社を経て現職。中小型株・新興市場株や為替の分析など幅広く担当する若手のホープ 【斎藤登美夫氏】 国際金融ジャーナリスト。約13年間の為替専門誌記者生活を経た後、独立。FXニュースレター社を設立し、代表を務める 取材・文/宏志(本誌) 図版/ミューズグラフィック  ※図・表 出所:大和証券、豪州統計局 ― 資源国通貨に資金流入[豪ドルがアツい!]これだけの理由【1】 ―
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